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【長文】日本サッカーが強くなれない理由(後編)
2008年08月20日 22:07
前回からの続き。
あるサッカー強豪校がイタリア合宿に行って現地のユースチームと試合。
むこうのコーチの印象は、「守備意識やカバーリングがとても良くできていてトップチームにも引けを取らない、代わりにボールタッチが難」
のようなコメントしたコラムを読んだことがある。
↑から日本の高校サッカーについて読み取れることは2つ。
・守備重視の指導を受けている
・基礎の上達が伸び悩んでいる
個人技重視の南米サッカーと組織重視の欧州サッカー、どちらが日本人向きかと言えば私も後者寄りの意見だ。
けれど、それは個人技を疎かにしていいわけではない。
A代表も五輪代表も得点力不足に泣いているのは今更挙げなくてもご存じだろうが……その理由は攻撃意識などなどあるけど、結局は個人技が足りてないからとしか言いようがない。
(もちろん前回で挙げた通り、フィジカルが絶対的に足りないのもあるが)
基礎を伸ばせる時期に充分な基礎練習を行っていないのが高校サッカーの問題点であり、その欠点を抱えたままJリーグから代表入りするから点が入らないのだ。
では何故高校サッカーはそういう指導をしてしまうのか。
それは高校サッカーという枠組み自体がサッカーと相性が悪いせいである。
高校は3年しかないので、「○○高校」を1つのチームと考えると選手の入れ替わりがプロと比べて非常に激しい。
ルーキー(1年生)、若手(2年生)、主力(3年生)と考えるといかに短いか分かると思う。
となると、高校サッカーの監督にとって、才能溢れた少年を「将来性重視」で基礎からじっくりと育てる……なんて不可能だ。
1日も早くレギュラーを張ってもらうよう、早期から組織的守備も教えて即戦力を作る指導に徹するしかないのだ。
負けたら終わりのトーナメント戦で日本一を目指すには、野放しの攻撃サッカーよりも組織的な守備サッカーを展開した方が正しいのだから。
その結果、クレバーで献身的だが積極性や基礎技術が今ひとつなサッカー選手が出来上がるわけである。
フィジカルさえあれば技術が無くてもどうにでもなるが、前回の理由の通りフィジカルが無いので技術を伸ばさないといけない……けれど基礎が身につかないまま育成期を過ぎてしまうのだ。
ちなみに同じ3年間の枠がある高校野球はどうか。
サッカーにはなんとも不遇な結論だが、野球というスポーツは「投げる・打つ・守る・走る」が全て個人技の集合体なので高校野球でも基礎を教えればいいのだ。
強いて言えば、ランナーの有無などにおけるシチュエーション別の守備連携だが、これの知識はプロでもそのまま役に立つので有用だ。3バックと4バックでやることが異なるサッカーとは違う。
試合数のやたら多いプロ野球なら配球の研究も必要だが、2度同じ相手と当たることがない高校野球では持ち玉の種類さえ把握しておけば充分だ。
加えて、高校野球には「甲子園」という大舞台への憧れが高いモチベーション効果をもたらすことも付け加えておきたい。
成長期に甲子園目指して必死に練習するのだから、もともと才能ある少年がアスリートとして開花する可能性は非常に高い。
一方で「国立」には全国大会以上の魅力が無い。TV中継の扱いの差を見れば明らかだ。
野球とサッカーの素材格差はこれも原因の一つと言える。
閑話休題。
というわけで、6年3年3年と細かく区切られた小中高制がサッカーに合わないのが育成面の弊害になっていると言える。
(小4で始めるケースが多いらしいので)9歳でサッカーを始めて18歳でプロ入りすると考えると、この9年間で小中高と3つのチームを経験することになる。
即戦力として勝つための指導を強いられ、一貫した育成プランを与えられないことが問題なのだ。
これは学校でしかサッカーできないのだから仕方がない。
しかも試合で結果を出さなければ次の舞台で特待生なりプロ入りできないのだから、基礎だけやってるわけにはいかないのだ。
もちろん真の天才ならば、組織的動きが出来ない=ファンタジスタと呼ばれるわけだが、そんな特異な存在は例外中の例外である。その他の、優秀だけど天才と線引きしたら平凡な素材をどう伸ばすかが大事なのだ。
今の日本サッカー界に必要なのは、9~18歳まで同じ組織でサッカーできる、学校以外の環境を用意することだ。
具体的例を挙げるならば、ユースチームの更なる強化だ。
ユースの監督は少年達をトップチームに上げられるよう育成に専念することができる。
フォーメーションや戦術はトップの監督でコロコロ変わるわけだから、育成段階では最低限の部分以外は特に教えなくて済む。とにかく素材を磨くことに専念出来るのが大きい。
とはいえ、育成は金がかかる。
育成して実になるとは限らないし、ユースの存在がトップチームに影響するまで時間もかかる。
それなら話題性もある即戦力高校生に大金積んでスカウトした方がマシ……かもしれないが、長期的視野に立てばユースは是非とも欲しい。(もちろん今の今までユースが存在しなかったわけではないが。)
だが人気絶頂期のJリーグならまだしも、現在の各クラブにユースに更に金を出せと言うのは酷かもしれない。
そこで、国に補助してほしいのが持論だ。
日本の場合、公共スポーツ施設を作ろうとすると何故か体育館が建ってしまう。
多目的を考えると体育館の方が多くの種目をカバーできるしメンテも楽だからなのだろうけれど、これからはサッカー場を作るようにしてもらえないだろうか。
国営のユースチームと考えると違和感があるが、まずサッカーをやる環境を作る方が大事だ。日本ではストリートサッカーなんて出来ないのだからピッチを作るしかないのだ。
サッカーの裾野を広げると同時に垂直に上がれるシステムを作ること……これが解決策になると考える。
コーチスタッフは各クラブから出すか、引退したJリーガーがライセンス取得の一環で指導するようなシステムを作るのもアリだろう。
ここで基礎を磨いてスカウトされるのを待つ。特待生として遠く離れた県の高校に入学するよりも地元の(国営)ユースで頑張った方が地域密着性の高いサッカーには相性がいいはずだ。頭角を顕せば各クラブのユースに移籍するのも手だ。
地元で育った少年がユースからトップに上がればJリーグの活性化に繋がるし、サッカー人気の上昇は良い素材の獲得に繋がっていく。
サッカーにしても野球にしても、夢見る少年は年俸の額で道を選んだりはしないだろう(たぶんw)
最初の動機は誰かのプレーに憧れてものだろう。
9歳でサッカーを始めるならプロデビューまで9年かかる。
中田英寿のキャリアピークをペルージャ~ローマの1999-2001年と仮定すると、彼に憧れてサッカーを始めた少年がそろそろ高校を卒業する頃である。中田がいなければ野球をやっていたかもしれない逸材が混じっている可能性を考えれば今のU-17は豊作の可能性が高い。(現に2006年AFC優勝、翌年3大会ぶりのFIFA本大会出場を果たしている)
だが彼らがプロとして活躍できなければ9年後の新たなサイクルに繋がらない。
U-17で結果は出したが、彼らが素質で勝ったのかチームの完成度で勝ったのかで意味合いが異なってくる。後者であれば日本代表の長年の悩みは解決しない。
もし悪い方向に転がれば、彼らに憧れてサッカーを始める少年がいなくなってしまうのだ。
素材不足が解決するまでもうしばらくかかる。
もしかしたらごく近いうちに超新星が誕生するかもしれないし、暗黒時代を迎えるかもしれない。
運が良ければ某QBKを反面教師にした純粋ストライカーが生まれ出るかもしれないが、高校で「守備もやれ」と言われてスタイルチェンジを余儀なくされてしまうかもしれない。
スポーツ選手の優劣は結局は素質の問題なのだが、有望な素質をどうやってサッカーを始めさせるのか、サッカーを始めたらどう伸ばしていくか……日本サッカー界はどちらも行き詰まったままである。
せめてどちらかが解決すればW杯グループリーグ突破は常時狙えるようになると思う。
どちらにしても十数年はかかる話だろう、ただその頃はまたアジアでW杯が開催されてチャンスが巡ってくるはずだ。
キャプテン翼で、翼は将来の夢として日本代表のW杯優勝を叫んだ。
しかし当時ジャンプを読んでいた少年は「ワールドカップ」が何のことかすら分からなかった。
それを出発点とすると、日本人のサッカー熱は進歩してきたと言っていい……が、その夢を実現させるためには根本的なことから解決しなければいけない。
大空翼はワールドユース(現U-20)で世界一になったが、W杯優勝まではしていない。(バルサ移籍はA代表に呼ばれないせいだと見ているが……)
漫画でもやらないということは、今の日本人の感性としてたとえフィクションでもあり得ない話だからに違いない。
あの作品が黄金世代に多大な影響を与えたのは間違いない……が、彼らに夢を見せた作品ですら足踏みしている状態では先は暗い。
願わくば日本サッカー界について、夢と現実の両方の夢が叶って欲しい。
せめて、夢が叶う夢を見られるよう進化してもらいたいものである。
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