WANDER YAHRE

１８の時、家出をして信州に向った。斉藤茂吉の息子で北杜夫が一時いた松本である。そこに５年間居た。　当時は、今と違って非常に寒かった。マイナス２０度である。どの様に生活していたかと言うと、何か協会のような所で知り合った家族にお世話になり、アルバイトとかして、時には昔、松本高校であった「信州大学」で聴講なんかもしたのである。

北杜夫と言えば、トーマスマンが出てくるが、僕もマンの小説にも引かれていた。特に「魔の山」は、松本近辺が舞台になっている気分にさせられた。　結核療養所が「美ヶ原」。ちょっと名が合わない気がするが、冬になると辺りが灰色がかってきて感じが出てくるのである。

古めかしい教授が「北杜夫」は、教え子だといっていた。その教授が試験問題を出した。「石炭から石油をつくる方法を述べよ」。北杜夫の回答が「石炭を売って石油を買う」。あまりにも珍答で、これで試験にパスさせたそうである。