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時間と処刑

2007年11月09日 10:22

時間と処刑

(実験)

...まてよ、しかし、なんでこんなタイミングで。

妄想の中の俺の血をひくものが、わんさか。

さて:俺には脳の中に息子が一人いた。そいつは巨大な目で俺を見つめていた。

なぜか。なにしろ、俺の息子はまだ5歳。まったき無垢の、すきとおる瞳。俺を恐れているようでもあり、また俺の「虞れ」を見ぬいているようでもある。

俺は、白シャツ大袈裟なほど血がべっとり。肩の附近を暴漢かなにかに痛めつけられていて、というよりは、もう切断されかけた感じ。右手が腱も神経も損傷し、ぶらぶら。

「かた、どうしたの、おとうさん」

「なんでもない 気にするな」

「血がすごいよ」

「うん。さわって見な」

「うん」

上半身をかたむけた瞬間、まやみにでんぐりかえるような不快な眩惑で、自由のきかぬ上半身からくずおれる。妙におちついた足取りで、彼は俺の上半身の方へ接近してくる。そうして、俯せであえぐ俺の肩からふき出す鮮血に、頬を、つけるのだ。

「あったかい」

「ここを、はなれろ。●○。いけ」

「どこにいけばいいの」

「どこか、俺が完全に視界から消えるトコロだ」

「おかあさんは、どこなんだろ」

「母は、いない。おまえに母は、いないんだ」

「死んだのかな、おかあさん」

「ああ、死んだ。わすれろ」

「ぼくも死んだほうがいいのかも」

「おまえは、死ねねえ。死ねねえんだ。....」

黒い棘だらけの翼を、ゆっくり開く、金属製の頭を陽炎のようにくゆらせる、黒い天使が、超低音のオルガンのように、瀕死の俺の、躯の横へ降り立つ。

彼を、俺の息子を、

かの黒い天使はゆっくりと抱擁し、

下を見る俺の息子の瞳が、

大粒のなみだをとめどなく落しはじめるのを見る俺は、

同時に、かの黒い天使の、

火炎をまとわりつかせた灼熱の剣が、

正確に俺の左目から頭蓋骨をさしつらぬくのを、

まるで他人事のように

観づる。

このデジログへのコメント

  • 埋葬虫 2007年11月09日 19:53

    コメントありがと 妄想とその焼付け(文章化)はかなり密接す (しかし俺はガンバるんだろうか...)

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