- 名前
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- 自己紹介
- セックスアピール?この歳で? きゃはは!んなもんあるわけないですわん! 皆様の奴隷人...
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これが「さよならを伝えたくて」さんでしっ!
2023年10月28日 22:19
皆様、今夜も真夜中過ぎの窓の外からこんばんはさんでしっ!
あたしのデジ日記さんで時々出てくる「さよならを伝えたくて」さんなんですけど
今夜は、「さよならを伝えたくて」さんからアップしてみますね!
とはいっても、まだ編集前になるんですけどね!
でも、どのページさんを掲載してみようかな?ってけっこう悩んだんですよ!(^▽^)/
というのも、この小説さんって、ページの続きに含みを持たせる手法をもちいているし
登場人物もけっこういるし、んでもって色々と絡み合っている感じなのでありまっしゅ!
でわでわさんでしっ!
戻せない時間・・・その10
彼女らしい・・・何気なくの言葉ではない。
由香が背中を向けたまま話す時の僅かな仕草の違いが、なぜかすぐに分かってしまう。
それが、今の僕には少し可笑しくもあり、そして少し寂しくもある事に浮かべてしまう笑みは
あれほど探し回っていた答えが、手を伸ばせばすぐにでも届く距離にあったからなのだろうか?
もし、僕が今、背中越しに彼女を抱きしめたとしても彼女がそれを拒まないだろう。
そして、僕が今、彼女の身体を求めたとしても彼女は戸惑う事もなく受け入れるのだろう。
愛し合った仲だからだろうか?
それとも、長い間夫婦だったからなのだろうか?
そんな彼女の心が分かってしまうだけに、消える事のない言葉が頭の中で木霊してくる。
もう遅いのだと・・・
もう手遅れなのだと・・・
そして、もう二度と戻れないなのだと・・・
そんな頭の中に木霊する思いとは裏腹に、彼女の言葉に僕は優しく答えた。
「君が望むなら・・・」
彼女は僕の言葉に考える時間を使わずに反射的に言葉を返す。
「どうして・・・?」
そして、僕に背中を向けたまま彼女が言葉を続けた。
「どうして、そんな事を言うの?」
振り向いた彼女の瞳から涙が流れていた。
「あなたは昔から何も変わってない・・・私の事、何も分かってない・・・」
「ん・・・?」
急に声を荒げるように話す彼女の言葉に驚く事もなく、僕は彼女を見つめていた。
「私の事を悪く言ったらいいじゃない?・・・言いたい事を言ったらいいじゃない?」
僕を真っ直ぐに見つめたまま話す彼女の顔が、溢れ出る涙で歪んでいく。
「私と暮らしたら、あの子はどうなるの?その女装だって私の事が原因なんでしょ?私にだって・・・それくらい分かるわよ!それとも、私が病気だから?あと1年の命だから?」
声を荒げながら僕を問い詰めようとする彼女の泣き顔が、懐かしいあの頃を思い出させていた。
また・・・泣かせてしまった・・僕は、彼女の泣き顔を見る度に、いつも後悔をしていた遠い記憶である。
「あなたが壊れたのは私が原因なんでしょ?それなのに・・・そんなあなたを私は見捨てたのよ」
きっと今まで、いや、今の今までずっと一人で我慢してきたのだろう・・・
彼女の心の想いを伝えられる人もなく、本音で話せる相手もいない中で
僕の悪口を言えば、聞いてくれる人を探して愚痴をこぼし
愚痴をこぼせば、愚痴をこぼした自分に一人で後悔をしては、また悪口を聞いてくれる人を探してしまう。
傷つく自分が怖いわけではなく、誰かを傷つけてしまう事が怖いわけでもない。
ただ、自分の心の中を見られる事を極端に嫌う彼女だから、選ぶ言葉を間違えてしまうだけなのに
誰も、その事に気がついてはくれないから由香は、また、僕を憎んでしまう。
彼女の心に触れたただ一人の僕が、彼女にとっては愛おしいく、許せなく、そして憎いのだろう。
20年も夫婦をやってきたわけだし、知り合ってからならもう35年にもなる。
彼女がどれほど優しくてどれほど傷つきやすい女性なのか・・・知っているのは僕だけなのだから。
だから・・・由香の悔しさも・・・悲しみも・・・誰にも言えなかった寂しさも・・・
由香の悲しい顔を、笑顔にすり替える事が出来るのは僕だけなのである。
「よく一人で頑張ったな・・・」
二人だけの空間の中で聞こえてきた僕の言葉に、泣いていたはずの由香が少し俯き加減になると
あの頃のように、上目使いで僕を見つめ返しながら、優しい微笑みを浮かべてくれた。
「褒めてくれるの・・・?」
「ああ・・・」
「ほんとに・・・?」
そう訊き返す言葉が、二人がまだ恋人だったあの頃の思い出を連れてきてしまう。
僕の気持ちを確かめたくて、いつも僕に訊いてきた由香。
離れていると不安になるからと・・・ドライブの時は必ず僕の手を握っていた由香。
僕との結婚を、家族全員に、そして、親戚にまで反対されて一人で耐えていた由香。
僕の言葉に、子供の瞳で微笑む由香は、今でも僕にとっては3歳年下の可愛い女の子なのである。
「おかえりなさいは?」
「へへ・・・」
由香の照れている顔を見るのは何年ぶりだろう?
僕は、昔から照れている由香を見るのが好きだった。
だが、そんな居心地の良い時間は長くは続かなかった。
不意に由香の笑みが消えていくのが、何を意味しているのか僕にはすぐに分かった。
キッチンのドアのすぐ横の壁を触っていた僕の左手に力が入る。
真っ直ぐに由香を見詰めている僕の微かな異変に気がついた由香が戸惑い始めている・・・
すまない・・・という気持ちと同時に、僕は右手で自分の口を押さえて覆った。
しかし・・・覆ったはずの僕の右手の指の隙間から赤い物が滲んできたその数秒後
覆いきれずに溢れ出した真っ赤な血が、由香の見ている目の前で床に流れ落ちていく。
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