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再会。

2007年05月24日 17:15

5/4の日記に出てきた男の話。
昨夜、半年振りに電話がかかってきた。
笑えるぐらいに動揺して、心臓が口から飛び出してしまいそうだった。
手が、震える。

「…はい」

『蘭?』

「うん」

『寝てた?』

「ううん」

『すぐ寝る?』

「ううん」

『…久しぶり』

「…うん」

『あのさ、俺のとこから持ってったペンダントトップ、まだ持ってる?』

「どこやったかな、…大事なもの?」

『すごく』

「そぅなんだ…。どこやったかな」

『明日なんかある?朝イチで予定とか』

「なんもないけど」

『じゃあ今から取りに行くから探してみてもらえる?』

「!?ぇ、今から??」

『うん、どうせ着くまでに時間かかるから、とりあえず探してもらえるかな』

「……わかった」

ペンダントトップ。友達以上恋人未満の関係だった頃、彼の部屋から拝借してきたもの。
彼には「アクセを1つ拝借した」とだけ伝えてた。本人も、いつまでたっても何をもってかれたのかわかってなかった。

ペンダントトップを見つけて、ついでに借りっぱなしで返せなかったパーカーと手袋を一緒に袋に入れた。
震えは、止まらない。
(落ち着け、落ち着かなくちゃ…)
煙草に火をつけて、震える手で吸う。
心臓早鐘を打ち続けたまま休もうとしない。
(何動揺してんだよ、借りてたもの返すだけだろ!)

2本目の煙草は気持ち悪くなりそうだったから止めた。
10分たっても20分たっても動揺と緊張は消えない。
そして彼からの着信。

「…はい」

『見つかった?』

「見つかったよ」

『今家の前にいるんだけど…出てこれる?』

「うん、行く。待ってて」

妙に優しい声が気になる。
私を裏切って捨てた男にしては優しすぎる。

『…久しぶり』

「これでしょ?」

『うん、サンキュ』

「こっちは借りてたパーカーと手袋、…そんなに大切なものだったんだ」

『うん』

「悪かったね」

『……』

「……」

『ちょっと、話す?』

「ぇ、いいよ」

『…』

「話すことある?」

彼は肩をすくめて首をかしげた。
本当は自分が話したいくせに、素直じゃない。責任逃れはズルイ大人のやり方だ。これで本人は私の意志を尊重してるつもりなのかもしれないけど。
彼は近所にある公園のほうを指差して歩き出した。
私は黙って着いて行く。
公園に着くまで、何気ない会話を交わして。
公園について、彼は飲み物を買ってくれて。
それぞれベンチの両端に座って、不自然に空いた空間が心の溝みたいだ。

『半年振りか…、話すの』

「うん」

『蘭なら、まだ持ってるだろうなって思ってたよ』

「どこにあるかわかんないぐらいほったらかしだったけどね」

『そうなんだ』

『俺さ、今休職中なんだ』

「なんで」

腰痛めちゃって、デスクワークがキツくてさ』

もともと腰痛もちで週に1度は私がマッサージしてあげていた体。
就職した当初からデスクワークは腰にくると漏らしていた。

「太ったね」

運動不足とストレスでね。これでも締まったんだよ』

へぇ~」

『…聞かないの?』

「聞いて欲しいの?」

『別に』

『…連絡しなくなったのさ、チビと付き合いだしたからなんだよね』

「…は?あの人彼氏いたんじゃないの?」

『俺と付き合いたいからって別れてきた』

チビ、かつて彼に迫っていた女。
私に似たタイプの人間。私よりも年上のくせにどうしようもない餓鬼。彼も彼女のことはあまり良く言ってなかったし、恋愛対象として見ていなかったはずなのだがこれで4度目になる告白と彼氏と別れてきたという事実に押されて折れてしまったらしい。

へぇ。…他の女と付き合うなら付き合うで、言ってくれればよかったのに」

『それが出来ないのが俺の弱いところだよ』

「今も付き合ってるの?」

『…微妙』

「なにそれ」

『別れ話したもん』

「なんで」

『あいつすごいガキでさ、半年我慢した俺偉いと思うよ?』

半年も我慢して付き合うって恋人?
ものすごく我が儘で、週に3日は彼の家(実家)に泊まっていたらしい。しかも寝かせてくれない。
寝るとビンタで起こされて「話そう?」と駄々をこねる。初めて彼の父親が彼の彼女に切れて、彼まで家を追い出されそうになったとか。

『あいつと付き合って「幸せだ」って思ったこと無いもん』

「そんなんだったらさっさと私に乗り換えればよかったじゃん」

『俺が1度付き合ったら自分からはそうゆう理由で別れないって知ってるでしょ?』

(しらねぇよ。)
第一、義務や責任みたいなもので付き合うのはおかしいと思う。

『メールにも電話にも返さなかったのは、出たら気持ちが揺らぐってわかってたから、それに今は出たくない返したくないって…』

きっと彼が患ったストレス性の急性腰痛の原因は、仕事だけでなく彼女の存在もデカイはず。
私なら絶対こんな結果にならなかった。倒れたりしなかったよ。
私はいつだって彼のメンタル面を支えてたもん。
これは彼も認めてることで、チビに私が劣っている部分なんてひとつもないんだよ。

『こんな世間話しにきたわけじゃないんだ…』

「なに」

『……ごめん』

「…、今さら謝って欲しいわけじゃないし。ゴメンだけで済ますつもりだったの?」

『じゃあどおして欲しいの?言葉じゃないんだろ?』

わかってんじゃん。
でも、今さらどうして欲しいかなんて私にもわかんねぇよバカ。

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