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混沌 その③

2017年12月11日 19:04

混沌 その②の続きです。


彼女の闇金問題も全て片付いた頃には、私が立て替えた表の借入金は300万を越え、私自身が事業の失敗で作った借入金の残金200万と合わせて、借入総額は500万を越えていた。

それでも、平穏な日常が戻り、彼女もデリを辞めて、クラブホステスとして働き、二人で返済していく事になった。

私と彼女とで毎月30万円を返済し、2年で返す計画だった。

全ての借金が終わったら籍を入れようと約束していた。

穏やかな日々が続いた。


しばらくは…


二人の休日には一日中裸で過ごし、普段スレ違いの時間を取り戻すように求め合うのが日常となっていた。

その日の彼女は何かが違った。

どことなく気もそぞろで、反応も悪く、触っていても濡れてこない。

「体調でもわるい?」

「え!…そんな事ないけど…」

「何か気になってるの?」

私がそういうと、キスで口を塞がれた。

そのまま、彼女の体を愛撫していく。

何か違う…

彼女自身の肌の匂いと味

いつもの優しい感じ以外の何か別のものが混ざっているような感じ…

気のせいだと言い聞かせ、気付いてない事にしてみたものの…

中の感触まで違った


デリをやっていたときにもこんなことは無かった。


確証を得るほどの変化ではなく、ホントに僅かな違いだったが、私は最後まで出来ずに途中で止めた。

「どうしたの?」

「…疲れてるのかな…」

その日はそれ以降、彼女と体を重ねる事もなく、買い物をしたり、二人で料理をして過ごした。

きっと気のせいだ


1週間後は私の誕生日だったが、無事に迎えられる気がしなかった。


今日も遅い…

明け方帰ってくると、手に携帯電話キャリアの袋を持っていた。

そんな余裕は無いはず…

「それ、どうしたんだ?」

「…お客さんに貰ったの」

「○○さん?」

「…そう」


2ヶ月くらい前から、ちょくちょく話しには出てきていた名前。

ここ数週間は、全くその名前を聞かなくなっていた。

「…そういうことなのか?」

「……。」

生まれて初めて女性を怒鳴った。

足の力が入らない。

毛髪が逆立ちザワザワとした全身の感覚とこの脱力感は

前にも感じたことがある、終わりの合図だ。


○○さんは堅気の人間ではない。

組に属してるかどうかまでは知らないが、その後の対決で堅気では無いことはハッキリした。

また全てを失うのか…

「彼のこと好きなのか?」

「…うん」

「彼もお前の事を本気で想ってるのか?」

「…うん」

「彼を呼んでよ」

「え?」

「彼が来るまでお前は一歩も表には出さない」

「彼と話をつけないとお前を渡さないって伝えて」

失うものは彼女だけだ

自分の命さえどうでも良かった。


白いベンツで現れた彼は、サングラスをかけ、エルメスシャツを着ていた。

歳も私より随分上に見えた。

それでも腹を決めた人間は動じないものだ。

「こいつがどんな女か、あんたわかってるのか?」

およそ口にしたこともない言葉が自然と出た。

頭の中の一部分だけ、妙に冴え渡っているのがわかる。

胸ぐらを掴みあって、彼の目を見たが、彼が本気で彼女の事を愛している事がわかった。

彼女を見るとただ泣いていた。

「こいつにカネの事、教えてやれなかったんだ」

「あんたがこいつに教えてやってくれ」

「ちゃんと生きていけるようにしてやってくれ」

私がそう言うと、彼は力が抜けたように座り込み

「…わかった」




行ってしまった。

後日、彼から定宿にしているホテルの一室に呼び出され、私が立て替えている300万の半分を渡された。

彼女に頼まれた」

彼女とは結婚する」


それを聞いて、私は泣いた

子供のように泣きながら帰った

別れたその日も泣かなかったのに、本当に全てが終わった事を悟ると、涙が止まらなかった。


そしてまた誰も居ない部屋で誕生日を迎えた。



若気の至りとはこの事です。

痛い思いをして、苦しんで、やっと平穏な日々を過ごすことができ、良い人生勉強をしたと、今になっては思うばかりです。

そういうわけで私は今でもギャンブルが大嫌いです…(^_^;)

そして誕生日が怖くて毎年ビクビクしています(^_^;)

そんなトラウマもそろそろ終わりにしたい。

これで私の黒い歴史は全部吐き出しました!

お付き合い、ありがとうございました_(._.)_

このウラログへのコメント

  • はる(*^^*) 2017年12月11日 20:50

    > 黒木.さん
    本当は300万の札束目の前に置かれました。でもそれじゃあ完敗じゃないですか…。でも背にはらは変えられないから半分だけ…って、それも情けなかったけど…。青くさいですよね(^_^;)

  • ☆りま☆ 2020年05月07日 07:54

    たった後ろから2日分のログを読んだだけなのに、何故だか涙が止まりませんでした。
    人の痛みがわかる人っていろんな意味で強いと思います。偉そうにスミマセン。

  • はる(*^^*) 2020年05月07日 08:31

    > りなさん

    古いログなのにコメントありがとうございます
    今は緊急事態宣言だというのに、あの頃に比べたら平和そのものだって思えます
    辛い経験も時間が経てば人生のプラスになるんですよね♪

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