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精子が老化する男と、老化しない男がいる

2015年09月10日 19:37

年の差婚が増えている。少し古いデータだが、結婚相談所アルパ青山」が2009年に同社で結婚に至った夫婦を調べたところ、「11歳以上の差」がある夫婦が46%もいたという。ほぼ半分だ。

 オヤジと若い女性結婚が成り立つ背景のひとつに「子作り」の問題がある。女性は年を重ねるとともに妊娠が難しくなるが、男性はそうではない。50代で子どもを作る男性は珍しくないし、往年の名優・上原謙は71歳で、チャールズ・チャップリンは73歳で父親になっている。卵子と違って、精子は毎日作られるので古くならない。セックスさえできれば男は何歳になっても子どもを作れる――そう信じている人も多いだろう。

ところが、実はそんなことはないらしい。「精子老化する男と、老化しない男。我々の研究から、男性には2種類あることがわかった」と話すのは獨協医科大学越谷病院(埼玉県越谷市泌尿器科岡田弘主任教授だ。
 岡田教授の研究では20~40代の男性77人から精液をもらい、マウス卵子に注入した。精子を注入された卵子活性化し、核の形が変化するという。ところが、中には卵子活性化できない精子もあった。

 「一部の男性は35歳から卵子活性化させる力が落ちる。特に不妊に悩んでいる男性にそういう人が多かった」と岡田教授卵子活性化させる力とは、すなわち妊娠させる力。岡田教授はそれを“精子力”と呼んでいる。
上原謙チャップリンのような男性もいることは確かだが、誰もが彼らのように末長く精子力をキープできるわけではない。実は「男も年を取ると子どもができにくくなる」という報告は以前からある。
 例えば782組の夫婦を対象に、「夫婦の年齢と妊娠する確率」を調べた論文がある。妻の年齢が27~34歳の場合、「夫が同い年」でも「夫が5歳上」でも妊娠率はほとんど変わらない。ところが妻が35~39歳になると、「夫が5歳上」は明らかに妊娠率が落ちている(下グラフ)。つまり、40歳を過ぎた男性は妊娠させにくくなるわけだ。
また、高齢の男性は「男の子」を作りにくくなるという。

 ご存じの通り性染色体にはXとYがあり、女性はXXに、男性はXYを持っている。卵子の性染色体はすべてXなのに対し、精子はXを持つものとYを持つものがあり、どちらが受精するかによって性別が決まる。つまり、生まれてくる子どもの性別は男の精子で決まるということになる。

 面白いことに、精液中のX精子とY精子は1対1ではない。なぜかY精子のほうが5%ほど多く、そのため新生児は男子のほうが少し多い。厚生労働省人口動態統計」によると、2012年は女子が50万5450人に対し、男子が53万1781人生まれている。「ところが50代半ばになると精液中のX精子とY精子の数が同じになり、それ以降はどんどんYが減っていく」と岡田教授。そのため、高齢の父親の場合、女の子が生まれやすくなるという。

 5081人の精液を調べた結果、精子の数は35歳から毎年1.71%ずつ減り、精子奇形率は41歳から毎年0.84%ずつ増えることがわかった。さらに44歳から精子の運動率が、56歳からはY精子が減っていく(Fertil Steril.2013;100(4):952-8)。

 要するに、女性だけでなく、男性も子作りタイムリミットは意識しなければいけないということ。晩婚化が進んでいるが、本気で子どもが欲しかったら「40歳までは独身でもいいや」なんて悠長に構えていられない。35歳を目安にがんばろう。

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