わんこ

「首輪……」

並んで歩くのは
出来たばかりの小奇麗なショッピングモール。
平日の昼前なのもあり
客の姿もまばらで子供連れの若い奥さんか
半分暇つぶしのようにまったりしている
人生の先輩たちがちらほらすれ違う程度。

ゲージに入っている子犬や子猫は
人のことなど関係なしに
思い思いにはしゃぎ、寝て、
”可愛い”を目一杯膨らませ発散している。

「どれにする？」

そう言葉をかけると貴女はビクリと肩を震わせる。
二人が前にしているのは首輪の売り場。
最近は小型犬が主流なのか、カラフルでオシャレだけど
細く短めな首輪が多いようだ。

「決められないのなら、こっちで決めるよ？」

貴女は下を向いたまま、小さく頷く。
ふぅん、と鼻を鳴らすようにしたのは自分。
選択肢が少ない大型犬ようの首輪を手にして
どれにしようかな、と呟きながら選んでいく。

「これだったら……キミの首にぴったりかも」
「色もいいね、朱色が綺麗だ」
「あまりゴツゴツしていないのも良いし、
　ナイロンじゃなく、革なのも良いな」

手にした朱色の首輪を見せると
キミは僕のシャツの裾をキュっと掴んでくる。
やや掲げるようにして、魅せつけながら
ポケットから財布を取り出し僕は低く言い聞かせるように

「じゃぁこれで、会計してきて……」

キミは……手が、出ない。
短いような長いような沈黙の間。
僕はゆっくりと深呼吸すると、

「一緒に会計してもいいけど。その時は……」
「”この首輪、この女性に似合いますよね？”って聞くけど良いね？」



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こんな妄想が楽しいです（笑）