暗くなると怖くなる

　
　琵琶姫は、中学生の頃怖い思いをした。学校帰りに痴漢にあったんだ。それも、自宅の真ん前で。今でもあのときの恐怖は忘れられない。逃げていった犯人の後姿まで思い出せるもの。

学校の帰りに一人で歩いていたの。部活をしてたから、たぶん6時ぐらいだったかな。季節は夏休みでまだまだ明るかった。明日から練習がないから、何をしようか、どこへ行こうかって楽しい想像をしながら歩いてたの。ちょうど、大好きな兄が大学院が休みで帰省中だったし。一緒に何するかでかなりワクワクしてたんだ。

そんなルンルンな帰り道に、突然恐怖はきたの。
きっとみんなからしたら、たいしたことじゃないのかもしれない。でも、そのときの琵琶姫はホントに怖くて怖くて・・・声も出せなかった。

ジョギングをしてるようなスウエットのおじさんが後から近づいてきて、（気づかなかった）いきなり後から抱きついてきた。最初は何が起きたか分からなくて・・・。

そのまま何もできずにいると、お尻をわしづかみされて、さらに足を開かされてアソコを触られたの。「え？なになに？」何が起きたのって感じで・・・。

おじさんが「ごめんね！」って言って走り去って行った。

琵琶姫はやっとの思いで、門を開けて自宅に入った。「ただいまー」って言ったら、お母さんとお兄ちゃんが出てきてくれた。

あんな恥かしいこととてもお母さんにも言えないって思った。しかも、性の知識に乏しかった中2の琵琶姫は、妊娠するんじゃないかって思った。（触られただけなのに）

お兄ちゃんがいつもと琵琶姫の様子が違うのに気づいて「学校で何かあったの？」とか色々聞いてきた。そしたら、涙が出てきて「今、変なおじさんがいたの」ってポツリポツリ話出して・・・。

特徴を聞いたお兄ちゃんは、俺がぶっ殺してやる！って言いながら、チャリにまたがって探しに飛び出して行ったの。

でも、犯人はとっくに逃げちゃってて・・・琵琶姫が帰ってすぐ言うか、声を出せればよかったんだけどね。でも、怖すぎて声も出なかった。

それで、お母さんに怒られたの。なんで叫ばないかったの！なんですぐ言わないの！って・・・。
だって突然すぎて何がなんだか分からなかったんだもの。

それで、お母さんと警察に届けたんだ。
最近、同じような手口が多いから同一犯でしょうみたいな感じで、家の周りを1日2回パトロールしてくれるって言われた。痴漢の人相や服装を詳しく聞かれた。それで、どんなことされたの？って言われて恥かしくて「アソコを触られた」って言えなくて。「お尻触られたの・・・」って。そしたら、おまわりさんは触るって言ってもいろいろあるけど、どんな風に？とか突っ込んで聞かれて、ほんと困ってしまった。

しばらくは学校帰りが明るくても怖くてたまらなかった。犯人がまた狙うと困るから、帰り道も変えた。

今でも、あのときの恐怖は消えない。
夜道は特に後ろを頻繁に振り返ってしまう。
それでもたまらなく怖いときは、ダッシュして帰るんだ。いつになったら平気になれるんだろう・・・。