チカちゃん

今
僕の
目に映っている
全ての物は
少し前の映像に
過ぎない…

だから
現在も
過去も

自分と言う
フィルターを通して
浄化された
記憶達なのだ…







子供の頃
保育園の３年間
小学校の６年間
計９年間
全て僕と
同じクラスだった
幼なじみの

チカちゃん



チカちゃんは
近所の蕎麦屋さんの
お嬢さん

いつも
僕にくっ付いては
(正確には僕の方がくっ付いていた)
お世話をしてくれた
ちょっと
おしゃまな
女の子

園児の頃の僕は
チカちゃんを中心に
女の子ばかりと
遊んでいた…

チカちゃんと
ぬいぐるみ遊び…

蕎麦屋の二階の
大宴会場で
テーブルを
ひっくり返して
すべり台遊び…

僕は
下手くそだったけど
あやとり…

いつも
焼き芋屋さんの
焼き芋を
チカちゃんに
おごってもらっていた…
(チカちゃんは子供なのにお金持ち)



小学校に入学しても
１～２年生の頃は
よく、連んでいた…

僕がその日
小学校で
何をしていたのかを
逐一
僕の母親に報告…

僕が
国語の教科書を
きちんと読めないと
読めるまで
チカちゃんからの
リピート　アフタ　ミー

かけ算九九が
覚えられないと
覚えられるまで
チカちゃんからの
スペシャル　レクチャー



２年生後半になると
自然と遊ばなくなった…

そして

チカちゃん

では、無く…

お互い苗字で
呼び合う様になった…



２年生の
３学期の始まりに
担任の先生が言った…

ワラ半紙に好きな人の
名前を書けと…

僕は
特に好きな人は
居なかったので

そこに

チカちゃんの
名前を書いて
提出した…

そしたら
次の日に
席替えが有り

チカちゃんの
隣りの席には
僕が居た…

チカちゃんが
ワラ半紙に
誰の名前を
書いたのかは
謎だったけど…



小学校の卒業式

チカちゃんだけは
みんなと違う
制服姿で現れた…

そして
それっきり
チカちゃんと
逢う事は無かった…



１９歳の時に
６年３組のクラス会が
開催された…

その手の会には
僕は殆ど出席しないが
その時は珍しく
出席した…

僕は
男友達と一緒に
会場に向かった…

懐かしい顔ぶれと
挨拶する中

女の子の集団の中から

「アキちゃーん！！」

ほっぺにはエクボ
屈託のない笑顔で
僕の名前を呼ぶ女性

同じ歳で
僕の事を
そう、呼べるのは
彼女以外
他には居ない…







何時になっても
その時の
想いに
出逢える

魂って
あると
思う…

全ては
自分と言う
フィルターを通して
僕に逢いにやって来る…



大晦日の晩
多分
彼女は
店先で
年越し蕎麦を
売っているだろう…

銭湯に行く途中
僕は親父と一緒に
何食わぬ顔で
その店の前を通るだろう…

心の中で

「○○ちゃん…」

つぶやいて
いるのかな…