- 名前
- ゆう
- 性別
- ♂
- 年齢
- 39歳
- 住所
- 千葉
- 自己紹介
- ときどき妄想小説書いてますw
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摩天楼の片隅で
2010年04月06日 20:16
すっかり日も暮れて空は暗いというのに街の明るさは昼間と変わることはない
街灯はもちろん、どのオフィスビルからも灯りがもれビルの上に掲げられた広告からは煌びやかな光が放たれて辺りを照らす
この街は本当に眠らないんだ
よく聞く代名詞がふっと頭をよぎってその通りなことに笑みが漏れた
摩天楼の中にあるホテルの1室
眼下には大通りが見えて絶え間なく車や人が動いている
クラクションやパトカーのサイレン、電車の通る音
街中を歩くときはあれほどまでにうるさく感じられた騒音が今はどこか遠くで鳴っているように聞こえ、なんだか心地よささえ感じる
今眼下を行きかう人たちはきっといつもと同じ、変わらぬ「日常」の中を生きているんだろう
その「日常」を上から見ている自分がなんだかおかしかった
旅行という「非日常」の中にいる自分が人の「日常」を見ている・・・
そのなんとも言えない奇妙さのせいかずっと窓から外を見ていても飽きなかった
「そんなに珍しい?」
ふいに声がした
が、そちらには振り返らずに返事をする
「なんか不思議な感じ」
カーペットの上を歩く足音が次第にこちらに近づいて止まる
すっと後ろから抱きつかれ彼のぬくもりを背中や重ねられた腕に感じる
彼も私と同じように眼下を見ていた
「確かに・・・なんか不思議だね」
そうつぶやく彼に「そう?」と返すと
「こうして二人で見てるのがね」
そういうとクスリと笑った
確かに普段は遠く離れた場所にいる私たちが今こうして同じ場所で同じ景色を見ている
それもまた不思議な感じだった
声以外決して知ることのできなかった彼の体、そのぬくもり、感触、鼓動・・・
それを今は直に感じられる
それがなんだかうれしくもあり恥ずかしくもあり照れを隠すように笑いながら
「そうだね」
と答えた。
すると彼はさっきより強く私を抱きしめた
密着した体からは彼の鼓動が聞こえてくる
心なしか早い
いや・・・それは自分の鼓動だろうか
ただ1つ分かったのはこうして触れるぬくもりが心地よかった
ようやく彼の方を向こうとしたとき、彼は私の唇を塞いだ
とっさのことに驚きながらも私はなんとなくこうされることを待っていたせいかすぐに彼の舌を受け入れ絡めあう
都会の喧騒とはまた違った甘美な音と熱を帯びた二人の吐息が静かな部屋に響く
長い長いキスの果てに見つめあった二人の瞳には都会のネオンにも負けない欲情の炎が渦巻き、長い夜の予感があった・・・
二人の「非日常」は大都会の「日常」の中でまだ始まったばかりだ
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