(続)壁一枚の関係

ﾏﾝｼｮﾝで隣が同年代の女性だったら…

薄い壁に隔てられているけれど

共同生活…

となりのちょっとした物音が聞こえたり

電話で話す声､明るい声も､暗い声も聞こえてくる

顔の見えない関係だけど

あなたのことはいつもわかる

笑い声が絶えないときは､幸せなんだねって

ほどなく

男性の声が聞こえるようになってきた

いつもよりよく笑い声が聞こえて

たまに急に静かになる

そして

夜は､私の知らないあなたの声

歓喜と悲鳴の合わさったような

卑猥な声が聞こえてきた


私は少し嫉妬に似た感情が…

顔も見たことない､壁一枚の共同生活は

楽しいだけじゃないんだ

いつもなら薄い壁

分厚く感じる


春が過ぎ､夏が来ても君は
その卑猥な声を

私の耳に届かせる


私にはもう耳に栓をするしかないのだろうか…

諦めかけていた

秋から冬に代わる寒い日に

君の部屋から音が止んだ

引っ越しの気配はなかった
どうしたのだろう?

久しぶりに耳から栓を外して

聞き耳をたててみる


…


……………

声を押さえ

すすり泣く

君の

今にも消えてしまいそうな

声


泣いているのかい?

男性の声は聞こえてこない






今すぐ俺が抱き締めてあげたい

でも



できないことは知っている


僕にできることはないかい?

ふと思う


君の好きな歌を歌おう


Mr.Children…
『旅立ちの唄』



隣に聞こえるよう

僕はｷﾞﾀｰを弾きながら

歌った


大きな声で泣く

君の声が聞こえてきた


その1週間後


私は長期出張で留守にした

帰ってきたとき､君の声はいつも通りの明るい声で

友達と旅行の話をしていた


ほどなく


隣が引っ越した


3月


卒業なのだろう


顔は見えない､壁一枚の共同生活は終わりを告げた


ふとﾎﾟｽﾄを見たら

手紙が入っていた

ただ一言

『ありがとう』

と添えてあった


私は涙を堪えて､

手紙を心にしまった


















妄想です(笑)

本当の話ならｽﾄｰｶｰですね…

いや～ｴｯﾁな話にする予定が…官能小説家には不向きですなぁ