趣味は読書、嫉妬、羨望、悪意

僕は、多分、このまま一人で生きて、死んで行くのだろうと思っている。
もちろん、先のことは分からないが。　
一、ニ年前に、同じ会社の定年間近の社員(男、独身)が結婚した。
初婚だった。
多分、籍だけ入れて、式などはしなかったようだ。
身内だけで内々にやったのかもしれない。
ともかく、彼が結婚したという事実が、僕には驚きだった。
まず、無いだろうと思っていたから。
私見だが、禿頭だし、性格もそんなに良い方ではないし。
金持だったのだろうかなどと、不遜なことばかり考えた。
嫉妬や羨望があったのだと思う。
超晩婚とは言え、新婚だったのだから、ノロけたりするかと思えば、それも無かった。
噂ばかりで、本人からはほとんど何も聞かなかったが、悪意のある噂は幾つか耳にした。　
その最たるものは奥さんが中国人だというもので、人種差別はないけれど、日本の戸籍取得の為に、利用されたのではないかというもの。
僕は本人からは、結婚生活については、断片的にしか知らされなかったが、20代前半の連れ子の娘がいて、同居していて、奥さんは毎日晩酌をするのに、彼は週に一度しか飲ませてもらえないとか、仕事が朝早いので、毎日夜十時に寝かされるとか。
結婚した当初、彼が急に太り始め、奥さんが毎日大量に食べさせると聞いて、健康を損なわせて遺産でも狙っているのではなどと、いった噂も流れた。
ともかく、今でも、素直に祝福している人は、少ないのである。　
しかし、本人が幸せならば、それで良いと思う。
ふと、ヘミングウェイの「フランシスマコーマーの短い幸福な生涯」という短編を思い出した。