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ある島の可能性 ウエルベックの新作

2007年06月06日 08:20

ある島の可能性 ウエルベックの新作

シェル・ウエルベックの新作の翻訳が今年の2月に出た。4月に購入してやっと読了した。もっぱら通勤途上の電車車内であったので、読書は遅々としていた。しかし、おかげでゆっくり読むことができた。
人間の生きる目的がつまるところセックスであるという悲しい事実を目の前につきつけてくれるウエルベックは(映画にもなった)「素粒子」で、(分子生物学者の弟が新しい人類を作り出すことで)人類の新たな姿を素描してくれた。
しかし、そこに至る過程は描かれていなかったのだが、今回の「ある島の可能性」でそれが描かれている。
 現代の中年男性の孤独、成功、性への渇望、そして愛情の欠落感。先進諸国の文化の有り様は、たしかにこの小説に描かれているようなものになっている。若い、無分別、無思慮な若者による性の饗宴。そこに愛はなく、それが人類の本来の姿なのだとしたら、やはりウエルベックの到達した視点が浮上してくるのもやむを得ないのかもしない。
 僕たちは未来人に会うことを夢見て、DNAを残し、それで永遠の命の保証を得たとして、喜んで死んでいくしかないのだろうか。

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