楽しかった職業

プール監視員はなかなかおもしろかった

高校の夏休みはいつもプール監視員をした
市内には2つプールがあり最近片方が潰れたと耳にした

競技メインのプールで50メートルプールは小学生不可、25mプールは狭く休日などはまるで地獄絵図のようになる

幼児用プールは大変浅く安全だが泳ぐというにはあまりにも浅い

おもしろいものはないように思えるが実際に働いていて見ていると楽しそうだった

仕事の内容は監視だ
何かあれば救助を行い必要であれば処置する
人口が密集するゾーンに人が沈んでしまっても容易に気が付くことはできないというが周りにいる人間が気がつくだろうと思ってしまう

しかしkidsたちの行動は予測不能で見守ってあげる必要があるのも確かだなと思った
そんな深さで溺れるわけないだろうと思っても溺れてしまうkidsたちもいた
半分は悪ふざけだが深刻な状態もあった

大事には至っていないが危険だなと思った

50メートルプールにはよくヤンキーたちが女の子を連れて来ていた
タトゥーなど禁止なので心苦しいがお引き取りして頂く他ないルールのプールだった

こうした事態の多くは揉め事となりこれはもう1つのプールでも同様だ
これもプール監視員という仕事のひとつで逆上したお客さんは大変なものだ
それが原因で辞める人間がいないのは奥から怖い監視員が出てくるからだ

彼は左官業の親方をやっている人で怖い
もっと怖いお客さんもいたがこれは大事にはならなかったと聞いている

幼稚園児が団体で来る日気合を入れる必要があって何時間も足元を水に取られながら園児からにげる事になる

彼らはトランシーバーを強奪し衣類を剥ぎとろうとする
集団で襲いかかってくる習性があって全く手に負えない
幼児用プールのシフトに入ると園児達の安全を確保するという名目で積極的に園児に接近し監視する必要がある

彼らはそれを見逃さず積極的アプローチしてくるのだ
ざっと20.30~はいただろう
後ろで笑いながら見ている連中も含めるとそれくらいだ

なぜ逃げるのかと思うだろうが執拗に水を浴びせられると人間は逃げてしまうようだ

修行の如く不動を貫けばトランシーバー、帽子、衣類などを奪われ挙げ句の果てには笛を鳴らされる始末だ

これは由々しき自体で冗談ではすまない
断固たる態度で接するが加熱した園児たちは留まるところをしらない

そうして監視員たちは巧みに監視をしつつ園児達から逃げ惑うのである

これはやる人がやると結構楽しいはずだ
きっとたまにだからだと思う大変な仕事だ

このように大事には至らないものばかりだが唯一つ心残りに思うことがある

ある日25mプールを監視していると震える女の子が目に付いた
寒いのかなと思いさほどきにはしていなかった
しばらくすると震える女の子の周りに友達が集まり肩を摩ったりしていた

さっさとあがればいいだろうがと思っていたがなにか違和感のようなものがあったのを覚えている

それからしばらくすると監視台の下に女の子がいた

よくわからない顔でこっちを見ておりなんともいえない表情だった気がする

どんな流れだったかは覚えてないが女の子たちがいうにはプールの中で触られたというのだ

思わずどこを？と聞いてしまったが直後にはやってしまったなと思い
いやなんでもないなどと言った記憶がある
相手は小学生の女の子であることを考えるとあまりにもデリカシーのない発言だと思う

ストーカー被害などの尋問官はもっとその辺を考えろよとも思う

話を鵜呑みにするわけにもいかずとりあえず犯人を教えて貰うことにした
女の子たちが指差す先にいたのは見るからに挙動不審の小学生高学年くらいの男の子だった

彼の事は前から気になっていて少し事情があるのかなとマークしていた

まさかそうした行動とるとは考えていなかったがまんざらでもなさそうな雰囲気だった

「痴漢発生。繰り返します痴漢発生。応援ねがいます。」

周りに聞こえないようにトランシーバーで上司に報告した
しばらくたっても応援がない
もう一度言おうかなと思っていると後ろから名前を呼ばれた

悪ふざけはよせと言われたが事情を説明すると怒った顔から新妙な面持ちへと変わった

女の子は未だに震えていた
周りの友達は怒っているようだ

しかし確証がない
証言だけではどうする事も出来いというのが上司の判断だった

つまりまだプール内にいる痴漢魔に女児を捧げる格好になってしまう

難しい判断だと思う
市民プールではあるが痴漢が誤認であれば親は黙っていないだろ

責任者が自身の目で判断する必要があった事は理解できるが腑に落ちない

結局犯行現場を確認し親御さんに報告、出入り禁止処分となったが割に合わないなと思う

震えていた女の子はもうプールには来ないだろうなと思った
地獄絵図のように密集するプール以外ならあるいはと思うが行楽シーズンではどこも似たようなものなのではと考えてしまう

海や川でエンジョイできていればいいなと思う