- 名前
- 厚木氏129
- 性別
- ♂
- 年齢
- 47歳
- 住所
- 福岡
- 自己紹介
- 福岡天神のマンションで一人暮らし 旅オタ。 (←最近してない ゲーオタ。 (←最近や...
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昨日の続き 2
2013年12月08日 10:52
騙され中のおれは騙されていることも知りません。
________ここから続き↓
ようやく時間になったようです。
一番最初に行くのがおれのペアです。
「キャー」「がんばってーww」
謎の激励を受けて階下に向かいます。
派手で少し高級そうなバーのようです。
さっきの店とつくりは同じはずですが、客は大勢います。
こちらの店のほうが照明が明るく、清潔そうな印象です。
連れの女が○○さんはどちらですか、と占い師について尋ねます。
見料払うと、案内人が誘導してくれました。
紫色の垂れ幕があります。
丸椅子が置いてありますが、周囲には誰も座っていません。
垂れ幕の内側に入ると、ベニヤのような安っぽい板で仕切られた小部屋になっていました。
テーブルの向こうに占い師がいます。
占い師は化粧をした若い男性のようです。
男の化粧にあまり好感は抱けませんが、顔に出さないようにしました。
女がペア用ソファに腰掛けます。
なんとなく流れでおれも同席してしまいました。
占い師はかすれた声で言いました。
「人探しですか?」
「・・・そうです」
偶然?
なぜ分かったんだろう。
おれはトリックを見破ってやりたいと思いました。
多分どうせ無理なので、すぐに諦めました。
彼女は姉の失踪の話を始めました。
身振り手振りを交えて熱心に語っています。
占い師は彼女の話を聞いているようですが、なぜかおれと目が合います。
ひととおり話が終わると、占い師は言いました。
「お姉さんは、とても言いにくいのですが・・・」
歯切れの悪い口調です。
「・・・! どこにいるんですか」
すると占い師はおれに話かけました。
「あなた、分かっていますか? きけ――」
女が占い師を遮って言いました。
「!! 先に姉のことを教えて下さい!」
おれは「おれのことは(占わなくて)いいので、彼女を」と話をあわせました。
ふと「 危 険 ?」という文字が頭をよぎりました。
なぜか占い師は、彼女と睨み合うような状態になっています。
例えるなら、おれを取り合っているかのような・・・?
おれが混乱していると、占い師が女に言いました。
「それでは香を炊きましょう。居場所がわかるかもしれません」
「やってください」
「いいですか?」
占い師が、なぜかまたおれに確認をとります。
「この人は大丈夫です」
彼女が言います。
おれも「大丈夫です」と答えます。
さっきから意味がわかりません。
占い師が金属製の箱の中からろうそくを取り出して火をつけました。
なんだろう、おしゃれキャンドル?
煙も出ないのに、鼻に詰まるような強烈な香りがしました。
腐った古紙を燃やしたような悪臭。
匂いがあたりにたちこめます。
めまいがしたかと思うと、目の前が真っ暗になりました。
「絶対おねえちゃんを連れてくから」
女の声が聞こえた気がしました。
夜道?
いや、真っ暗な通路。
おれの意識はどこかに向かっています。
「こっちよ」
そばに誰かいるようだけど、わかりません。
たぶん連れの女です。
どうやらここは山道です。
おれの意識は、途方も無い速度で木の間を進んでいます。
まるで鳥のよう。
木の根に挟まれた女の子が見えます。
「いた!!」
すぐそばから連れの女の声がしました。
急におれの意識がブレて、上下に揺さぶられました。
不快感はありましたが、揺れたにしては吐き気はしません。
意識だけが揺れたせいか?
おれの目の前には、木の根がありました。
木の根のそばに、もやもやした何かがいるのを感じました。
連れの女が2人いるようです。
「ああ。双子だからか・・・」
「先に姉を連れて行くので、あなたはここで待っててください」
「うん」
「それじゃあ」
双子が遠ざかっていきます。
「さようなら」
遠くから声が聞こえます。
おれは木の根に挟まっていました。
おとなしく待ちます。
あれ?
ここはどこだろう。
いつまで待つんだろう。
なんでおれはここにいるんだろう。
おれは・・・騙されました。
どうやらおれは、今後ずっとここにいることになるようです。
彼女が姉を見つけて、連れて帰るために、姉の身代わりが必要だったのですね。
ようやくわかりました。
あっけにとられて、腹も立ちませんでした。
あのオカマの占い師は、おれの危険を見抜いていたのか・・・。
信用していなかったので、一切の話を聞く気もありませんでした。
自業自得?
見料を支払ってないから仕方ないw
おれは感覚だけの世界で、全身の力が抜けていくのを感じました。
さて一方。
双子は帰路にいました。
意識の中のせいか、おれが留まっている木から離れていくふたりの様子がわかるようでした。
ふたりは山道を歩いています。
一人は大人だけど、もう一人は子供です。
「おねえちゃんはやく!」
大人が子供の手を引いています。
子供の足取りがおぼつかない。
だんだん速度が落ちているようです。
「足が痛い。もう歩けない」
「どうして? 帰りたくないの?!」
「木が重いよ。枝がジャマして進めない」
とうとう子供は嗚咽を漏らしました。
なんとか歩かせようと、なだめたり脅したり。
でも小さな子どもの姉は、妹と違ってこれ以上道を進むことができませんでした。
子供の姿の姉の服は泥まみれ、皮膚はやぶけ手足もボロボロ。
子供の姉は自分の手足を、大人の妹と見比べて言いました。
「わたしもうおねえちゃんじゃないね」
「だってこんなに違うんだもん」
「ごめんね。おねえちゃん」
「わたしも、もう疲れちゃった」
ふたりはわんわん泣きました。
子供の姉が言います。
「帰れる?」
「うん」
こうして意識上の旅は終わりました。
目を覚ますと、正面には占い師がいました。
連れの女は、すでにいませんでした。
気まずくて去ったのでしょうか。
おれはベニヤの小部屋から出ました。
占い師もすでにおれに関心は無いようでした。
お互い目も合わせません。
もう大丈夫なのかな。
ある意味安心です。
バーではまだ騒いでいたようです。
おれが戻ったのことにも気付かなかったようでした。
おれは支払いを済ませ小雨の道を帰りました。
おわり。
出典 異界の水守り/百鬼夜行抄:今市子
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昨日は忘年会でした。
こうやって騒いだあとは、家に帰ったあとの虚無感がキツイですねって話をしたら
「賢者モードですか」
って言われました。
違うわ。
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