大切な大切な

去年の12月10日朝8時頃自宅


父は食事をのどに詰まらせて

母と妹の目の前で逝きました


僕は出勤途中に連絡を受けて、父が運ばれた病院に駆けつけました


ベッドに横たわり
目を半開きにし
口を開いたままの
まだあたたかい父



見た瞬間、体が動かなくなりました
全身が痺れたように麻痺し

口は嗚咽しか漏らさず


ただ、泣きました


余命宣告から１年と３ヶ月


父は３ヶ月も長く、頑張って生きてくれたんです

その頃の父の体はもう満身創痍でした

家でも車椅子で生活

両手は器具で持ち上げなければ動かせない状態


舌を動かす筋肉すら無くなり、呂律はほとんど回らず

食べ物を飲み込む力に至っては、ほぼゼロだと言われました


それでも父は、母が食べやすいようにと作ってくれた麻婆豆腐や冷奴などを
自力で必死に食べようとしていました


その甲斐と父の気力あっての長生きだったんだと思います


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父の余命宣告は父の誕生日の２週間前でした


当時は精密検査のために入院していた父に
誕生日プレゼントは何にしようかとずっと考えていました


もしかしたらこれが最後かもしれない

自分にしかできない精一杯のことをしたい


考えて考えて、たどり着いたのは
一本の電話でした


誕生日の夜の20時



「もしもし、父さん？俺やけど、今大丈夫？」


「おう、どうした、何あった」


「あのさ…俺、来年なったら成人して働き始めるやろ？」


「おうそやな」


「１つだけ約束してもらいたいことあるんやけど…」


「お、おぉぅ、なに？」

「…………俺が立派な社会人なるのを見とってくれ。あんたに負けんような立派な社会人になるから！
そんで母さんと妹とばあちゃん、俺がちゃんと守っていくから!!
………だから…｣



「…………」


「だから…………だから父さんも……頑張ってくれ……!！
頼むわ……!｣


「……………っ!!」



人前では絶対に涙を見せなかった父と
電話越しに
一緒に泣きました


死なんでくれ……頼む……っ頼むから……


っ、おう、おぅ…っ、わかったぞ……っ!!
頑張るから…!お父さん頑張るからな……っ!
ありがとうの…

約束やぞ……！！





電話を切るまで、二人して泣き続けました


その夜は、ずっと泣いて

泣いて泣いて
父を思って泣きました



父の後を継ごうと決め

家族を守ろうと決め


そして父と同じように
人前では泣かないと決めました


この信念だけはずっと曲げずに生きよう


そう思い、通夜と葬式で父を見送りました


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僕が父への憧れを確信したのは

父から母への誕生日プレゼントです


父は毎年行きつけの花屋で花束を注文し、母に送っていました


それも、わざわざ郵送で家に届けさせるんです


照れくさがりの父の精一杯の愛情表現でした


しかし去年ばかりは
足も不自由になっていて自力での移動ができないために
その注文には母に内緒で僕も付き合うことになりました


まだ何とか回る呂律で、いつも通り絢爛な花束を誕生日に届けてくれと頼み

これで終わりかと思った僕をよそに父が





「この注文って、来年の分もできますか？」



と尋ねたんです


すこしばかり唖然とした僕をよそに
承諾を聞いた父は




「来年、お母さんビックリするぞ!!死んだお父さんからプレゼント来たってよ!!」



嬉しそうに
楽しそうに笑う父の顔は

病気になる前となにも変わらず、晴れやかでした


そんな父を僕はこの時
心から尊敬し
格好いいと思ったんです!!


帰宅した時、心配そうに母が駆け寄ってきて
執拗に行き先を聞いてきましたが

僕と父は「別に」の相槌で笑い合っていました




父がいなくなって
父の物が片付けられると一気に喪失感が襲ってきました


本当に死んだんやな…

もう触れんし、会えんし
声も聞けないんやな…



受け止め切れない現実

一番の「大切」を無くした悲しみ


これらはいつか必ずしも味わうものです

遅いか早いか、それだけです


僕は、20年も僕を育ててくれた

愛してくれた大切な父親に尊敬と感謝、慈愛の心を捧げて

これから生きていこうと思います



50年後くらいには、たくさんの土産話を持って

また会いたいなあ


会えるといいなあ!!




ここまで読んで頂いた方、ありがとうございました


次からは通常のしばてぃです!!(笑)
今後もよろしくお願いします!!m(__)m