- 名前
- 実花子
- 性別
- ♀
- 年齢
- 32歳
- 住所
- 愛知
- 自己紹介
- 喪女と化してますが、たまに日記書きにきます。 猫好きの猫娘です。
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授業
2012年05月03日 16:21
>私は始終眠りこけていたようです。大学のキャンパスに着いてからというもの、上まぶたは下まぶたとひっつきたくてしょうがない、といったようすでした。そんな風ですから入学前に持っていた、あれもやりたいこれもやりたい、といった淡いやる気みたいなものも、うーんと少し伸びをする間に宙に消えてしまったのかもしれません。
今日の一限は特に眠たい授業でした。いえいえ、先生は悪くないんです。少しばかり夜更かししたツケが回ってきたのでした。最初にプリントを二枚ばかり貰います。それに目を通している間に最初の睡魔が襲ってきました。うつらうつらして、がくんと落ちかけた首を上げると先生は既にプリントの裏面を説明をしてらっしゃいました。見上げた黒板には大きく「陽旋法」と書いてありますが、どうゆう意味なのでしょう。
音楽の授業なので時々輪唱したりリズムをとったりします。でも気になった私は電子辞書を取り出して陽旋法の意味を調べようとしました。しかしカバンの奥に潜り込んでいてなかなか取り出せません。少し面倒になったその時、窓越しに小鳥のさえずりが聞こえました。初夏に満たない5月初旬の若鳥が飛び立つ様が見えるようです。まぶたを閉じればまるで鮮明な映像のように浮かび上がります。これを音楽と言わずに何を堅苦しいことを言う必要があるのか、と思うと詩人気取りな悦に浸って満足していたのでした。
気付くと先生が私の目の前に立ってらっしゃいました。いつの間に教室に入ってきたのでしょう、先程の先生とは違う男の先生です。眼鏡越しに薄ら笑いを浮かべた先生は教壇に戻って黒板をコンコンと叩きました。見上げた黒板には大きく「出て行け」と書いてあります。どうゆう意味なのか一瞬理解できずに目を見開くと、教室にいた皆が口々に、出て行け、と言うではありませんか。私は氷を飲み込んだように胸が冷たくなり動けなくなりました。誰か彼かの視線が次々と突き刺さり私はそこに居ることも出て行くことも許されないような心持ちになってうずくまってしまいました。ただただぎゅっと目をつむって堪えていると、チャンネルの合わないテレビが点いているようなザァっという音が聞こえてきました。冷たい視線も嘲笑も少しずつかき消されていきました。
私は始終眠りこけていたようです。目覚めると窓の外は雨でした。鳥のさえずりも気持ちの良いそよ風もなく、生温かく重い空気が充満していました。見上げた黒板には大きく「陽旋法」と書いてあります。教室にはある筈の時計が見当たりません。私はふと今何限目なのか分からなくなりました。鈍色の空を見上げると更に勢いを増して風雨が植木をなぶっていました。夕立だったのかもしれません。先程の氷のように冷たい感情を少し胸に残したまま、どうしようもなく睡魔に襲われた私は再び眠りに落ちていきました。
(5/1 ritten by Mikako)
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