支配(表)

彼女の微笑みは、彼の理性を失わせる事の出来る微笑みだった…

湿った指先は既に、乾いていたが…
まだ、感触は確かに指先に残っていた…


数歩先の彼女は彼に近づき…

彼女のしなやかな指先が彼の手の甲に触れながら、『残業されるの？』と悪戯っぽい目つ
きでささやかれ…

心を読まれている事、堕ちる事への恐れが脳裏をよぎり…

「…君は何が望みなんだ…？、以前から知っていたと…？」

彼女の顔は確かに、どこかで見ている…
が、いつどこでなのかが全く思い出せない…

『私の望み？今の彼方が望んでいる事が、きっと私の望み…』

彼の脳裏には、電車の中での痴態の際に脳裏をよぎった「見たい」という衝動が望みでは
あるが、その衝動を打ち消すに十分すぎる程の微笑を彼女は向けていた…

その思いを、手のひらでもてあそぶように

『残業しましょうか？』

の一言で、欲望が彼を支配し、触れている彼女の手を強く握り締めた。

彼女は、その手を握り返し…

駅前を後にした…

※表だからね～
裏公開まで待っててね(笑)