- 名前
- 実花子
- 性別
- ♀
- 年齢
- 32歳
- 住所
- 愛知
- 自己紹介
- 喪女と化してますが、たまに日記書きにきます。 猫好きの猫娘です。
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異文化コミュニケーション(短編小説)
2011年01月30日 02:04
「もし私が仮にズドラバケベック語で“コンニチワ”
という意味である“オマエ、クズダロ”を音声として受け取ったとして一瞬ムカッとしてしまうのは致し方ないことでしょうか?」
by実花子
某雑誌企画の取材班であるK氏は一人ジャングルの中を彷徨っていた。最近発見された部族を取材せよと命じられこの異郷の地にやってきたのだが、チームのメンバーからはぐれたのだ。食料も底をついた。おまけに君の悪い芋虫やトカゲが四六時中足下を這いずり回っている。鬱蒼とした樹木が地表に暗い影を落とし始めていた。K氏はへたり込みそうになりながらも必死でジャングルから抜け出す出口を求めて歩き続けた。
「今頃、同僚達はどうしているものか。」
と途方に暮れるも既に仲間を見失ってから丸三日経ったことに気付いた。
嗚呼、こんな得体の知れない地で僕は一生を終えるのであろうか。そんな想像にふけるK氏は思わず涙ぐんでしまった。どこからか、お迎えの声が聞こえてきた。茂みの向こうから陽気な唄が聞こえてくる。それはまさに今の自分にぴったりな唄であった。
「アホアホ、バカバカ、糞マヌケ!クズクズ、トンマ、死ネバイイ!」
幻聴だろうとその場にへたり込んでいると、声の主は次第に自分に近づいてくるようであった。それは大の字に寝転んでいる彼の足下にまで迫らんとしていた。
「オマエ、クズダロ!」
ああ、その通りだとも俺はクズだ。
「オマエ、クズダロ!」
幻聴が、いや天の声が死を目前にした彼をクズだと認定した。
「俺はクズだとも!」と彼は目を閉じたまま絶叫した。
そうすると一瞬静けさが訪れた。だが、それは一瞬であり更にざわざわと話し声が聞こえてきた。
「クズカ?クズカ?」「クズダ!クズダ!」「クズダ!オマエ、クズダ!」
なにやらお迎えの神様でも死神でもなかったらしい。人間がヒソヒソ話し合っているようだ。それも大勢……。
K氏はゆっくりと目を開けた。するとそこには見たことも無い皮だか羽だかで作られた装束を着た東南アジア系の原住民が12、3人程立ちはだかっていた。彼は思い切り声を出そうとしたが、あまりの衝撃に口をぱくぱくさせるだけだった。
「クズダ!クズクズ!オマエクズ!」
クズを連呼し続ける連中達は彼の腕をぐいっと掴み肩に背負ってしまった。
「ちょ、ちょっと……!」と言う間もなかった。
K氏は籠のようなものに放り込まれ、蓋を閉められた。
「アホアホ、バカバカ、糞マヌケ!クズクズ、トンマ、死ネバイイ!」
原住民達は繰り返し叫び続け、えっさえっさと行進を始めたようだった。
何時間、いや何分後だったかも分からない。K氏は籠から出された。そこは原住民達の暮らす村のようだった。衰弱していたK氏は、今度は担架の様なもので担がれ、どこかへと運ばれてゆく。こいつら人食人種じゃないだろうな、と微かな不安を感じたが、どうやら杞憂だったらしい。彼らは果物やら飲み物やらをK氏の所に運んできた。
「糞クラエ、死ネバイイ!」
と一人の男が言うと、他の者達も続いて連呼した。何故か彼らの表情は気持ち悪いくらいニコニコとしていた。K氏は空腹から、そんなことには脇目も振らず飲み、食べ、そして疲れから知らぬ間に意識を失っていた。
起きたのは既に翌日となった朝だった。とりあえず自分はもてなされていたのだろうと思い、ほっとした。
しかし、彼らの口から未だ、クズ、糞、死ネ、しか聞いていないような気がする。しかし、彼らの表情からその手の感情は一切見受けられないのはどうゆうことだろう。……そうか、なんで今まで気付かなかったのだろう。それが彼らの言語なのだ。日本語の字面どうりで一瞬でも考えていた自分が馬鹿だった。あれは彼らなりの挨拶、または掛け声ではないのか。否、もしくは彼らは言語によるコミュニケーションを必要最低限に抑え、その場のニュアンスや表情で意思疎通を図っているのではないだろうか。いや、そうに違いない。不意にK氏は今回の任務の件を思い出した。そうだ!彼らは例の部族に違いない。では尚更親密な関わりを持つべきだ。カメラもフィルムも幸運なことにそろっている。そんなことを考えていると、二人の女が食べ物を運んできた。
「オマエ、クズダロ!」
今日も彼らはやっぱりクズを連呼している。彼女らは寄り添うようにK氏の横に座った。そして、その表情はやっぱり気持ち悪いほどニコニコしているのだった。思い至った様にK氏は言った。
「お、お前、クズだろ!」
あらん限りの笑顔を造って彼はそう言ったつもりだった。しばし、二人の女は呆然としていた。そして急に真っ青になって、「ク、クズダロ!クズダロ!」
と悲鳴にも近い声をあげ、立ち上がった。声を聞きつけた男達がK氏を羽交い絞めにした。
「糞クラエ、死ネバイイ!」と、今度はさっきまでとは似ても似つかぬ恐ろしげな表情で罵るのだった。K氏は衣服、カメラの入ったリュック、その他持ち物全て剥ぎ取られて素っ裸にされた。男達の中で一番屈強そうな奴がジャングルの中で彼をそうしたようにK氏を乱暴に肩に背負った。K氏は村の中央の広場らしき場所に連れて行かれた。そこには竹でできた簡易な檻が用意されており、その中には既に素っ裸にされた男達が三名ほど拘束されていた。その中の一人がK氏に卑屈な笑みを浮かべてぼそりと言った。
「そのうち来ると思ってたぜ。」
「せ、せんぱいっ……。」
閉じ込められていたのK氏の同僚達だったのだ。
「クズ、死ネ、糞マヌケ!」と叫ぶ原住民達の手によってK氏は檻の中に放り込まれた。
「みんな……いつからここに居たの?」
「お前とはぐれてからすぐ。」
同僚三人達は面倒くさそうに答えた。
「食べ物は?」
「朝と晩に奴らが放り込んでくる。」
僕はふと気付いた。彼らが“言葉”をお互いに交わしているとこをまだ一度も見ていない!
そんなことを考えてうずくまっていると、
「アホアホ、バカバカ、糞マヌケ!クズクズ、トンマ、死ネバイイ!!!」と、地響きの様な雄叫びが聞こえた。檻の中の素っ裸の人間を物珍しげに見物していた子供達がささっとどこかへ逃げていった。やってきたのはどうやらこの村で一番偉そうな奴、多分村長だった。そして唾を飛ばしながらこう言ったのだった。
「オマエラ、クズ!ワシラ、クズジャナイ!」
>>追記
夜更けまで馬鹿やってますw
非常に眠いのでもう寝ます…
気になった人はコメくだしゃい……
褒めてくださるのも、けなしてくださるのでも結構ですから。
このデジログへのコメント
長文おつかれちん (^ω^)
実花子の頭の中を見てみたい★
wwwうぇうぇwww
「おばあちゃん、彼女全然食べないよ!」→「She never eat,nanny!」ってあったなぁ
けなしていいの?
> たけるさん
え~……褒めて伸びるタイプでしゅw
> ヒデさん
シネバイイノニ……高校の時の友達の口癖www
> ★9ちゃん。★さん
一千万円くらい貰ったら頭の中を総スキャンして頂いても結構です゜∀゜w
とても面白かったです
私には無い発想
次回作を期待します
> voyeurさん
コメありがとぉ
また書きます
> しげおさん
嬉しいです!また変なモノ書くねw
これまた~面白い表現やな~(´∀`)
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