泥沼を。

泥沼を一緒に歩いてくれるのならば、それもいい。
どんなに汚く冷たい底のない沼だとしても
きっと私は平気だから。
けれど、あなたが泥沼を一緒に歩いてくれないのなら
整備された歩道の上を歩くことを選ばなければならないのだろう。
歩道の上では、並んで歩くことさえ、許されないのに。


もう少し、大人になりたいと思う。
そうすれば、わたしが楽になれるから。
無口なあなたにひきづられて、おしゃべりな私の愛は行き場を失う。
好きな気持ちと、それだけではいけないことを知ってるあなたと
そのことをすべて知っている私は
言葉に慎重に、今を壊さないように、変に大人の振りをする。
愛しい愛しい。
私にはそれが多すぎて。
あなたには、そのほかの荷物が多すぎる。


大人ばかりの中で育ってきて
人の顔色を窺う術を割りとはやくに身につけました。
今でも、人の気持ちは察することが出来る方だと思います。
そんな私なので、あの人が、私を大切に、そして恐らく愛情を持ってくれていることは
ずっと前から察していました。
言葉などなくても、行動、態度、ぬくもり。
いろんなものを貰って、ずっと感じています。
時々、無性に不安になって、言葉が欲しいこともある。
声が聞きたいこともある。
そんな自分にうまく折り合いを付けられずに
私はしょっちゅう泣いています。
大好きです、ずっと、一緒にいられたらいいのに。
そう思うけれど、２４にもなればそれが無理なことも知っています。
無理、ではないけれど、代償が大きすぎるのです。
人は、何かを得るために何かを捨てないといけない、と昔友人に言われました。
大切なものを得ようとすれば、それと同じくらい大切なもを捨てることになる、と。
捨てられない、否、捨ててはいけない、ものもあるのでしょう。