境界

わたしは　わたしの中に
触れられない他人を抱いている

この声は　ほんとうにわたしのものか？
この涙は　誰のために流れている？

あなたの痛みを　知りたいと願って
何度　手を伸ばしても
その皮膚の下までは　届かない

心と心が
繋がるなんて幻想だと
知っていても
それでも　触れたかった

肉体は　殻だ
魂は　霧だ

混ざりあえず　溶けもしない
ただ　隣り合って
それでも遠い

わたしは　わたしを理解できない
昨日のわたしと
今日のわたしさえ
断絶している

他人（ひと）を愛せるのか？
自分を信じられぬままで

それでも　願ってしまう
誰かに、触れてほしいと

わたしという
名もなき境界の内側に