並列世界

御主人様と出会ったのは年末の忙しないころでした。某SNSで一緒にお食事に連れていってくれる人を探していたら声をかけてくださいました。某SNSは募集をかけるとたくさんの連絡がきます。いきなりタメ口で一言二言だけのものや、会ってもいないのに俺の女になれ、や、いきなりセックスを求めてくるものなど。それは、あたしだって屈強な男の肉体に屈伏して滅茶苦茶にされたい、道具のように扱われて性処理に使われたいと思っているけどそれ以外のときも普通にお話して一緒に楽しく過ごしたいから、こうした連絡は無視してしまいます。だけど、数ある連絡の中から御主人様のものは丁寧で写真もマスクはしていたものの悪くなさそうだったのでお会いすることにしました。久しぶりに知らないひとと会ってしまうあたし。本当は男に征服されたいのに平静を装い待ち合わせ場所に向かいました。到着すると御主人様は既に待っていて優しく声をかけてくださいました
。そして、どこに行きましょうか？と会話してひとまず個室の居酒屋に行くことにしました。御主人様は居酒屋で席を案内されて座るときに横に座るように誘ってきました。あたしは、獲物を見るようなその目に背筋をゾクゾクさせながら、このまま座れば今日あたしはこの男に犯されるのだわ。と想像しながら唇の間から何かが滴り落ちる感じました。だけれども、あたしは丁寧にお断りして向かい側に座りました。今ではないの。お食事の間、御主人様は優しく話しかけてくれます。でも、どこか冷たい。そうして少しの違和感を感じながら過ごしているうちにお酒もそこそこ入りあたしは我が儘になっていきました。そして、居酒屋を出て楽しそうに腕を組んで何軒も梯子しました。なるべく無邪気に振る舞いました。支配したいと思われただろうか。こうして御主人様との最初の出会いは終わり、次の逢瀬の結末を知らないあたしは期待と不安が入り交じる気持ちを胸に自分の部屋に帰っていったのでした。