- 名前
- 心太
- 性別
- ♂
- 年齢
- 54歳
- 住所
- 神奈川
- 自己紹介
- 普段は真面目だけど実はH、要はむっつりってことですねw 固い仕事をしているので、普段...
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【お題日記】お正月のラブホテル空室探し
2018年01月02日 20:03
あれは数年前。
俺たちが付き合って初めて迎えた正月のことだった。
大晦日から年越しをするのは自然な流れだったとはいえ、「夜通しのデート」は二人にとって初めて。
あいつも俺も、初詣の列に並んでいる間ずっとテンションが上がりっぱなし。
でも、それは…今夜結ばれるかもしれないという予感から来る照れ隠しだったのかもしれない。
除夜の鐘が鳴った。仰々しく新年の挨拶をし、賽銭を投げ、二人で手を取り合って鈴を鳴らす。
後でわかったことだけれど、二人とも同じことを願っていた。だからなのか、お互い握り合う手に力が入っていた。
境内を抜けた後・・・帰りの電車はまだ動いていないし、少し前に食事したばかりでもうお腹も満たされているし、この後どうするのかプランもなく…二人は深夜にしては人通りが多い夜の街をあてどもなく歩いた。
交差点に来るたびに、適当に右や左に折れ曲がっていくと…そこはラブホテル街。二人は目が合う。
「あ、え?い、いや、俺、こんなところに来るなんて知らなかったから…。」
「あ、ううん、そうだよね。私たちこの街に来るの初めてだから、偶然だよね。」
「そうそう。偶然偶然。あ~偶然。」
「(笑)なにそれ。偶然で良かったっていう顔してる。」
「(笑)偶然で良かったっていう顔って、どんな顔なの?」
「(笑)そんなの私にはわかんない。」
「(笑)自分で言い出したんでしょ。」
列に並んでいたときのテンションが二人に戻ってきた。
自然と二人は手をつないでいた。そして、「空」という文字がないか目で追い続けた。
そんな二人をあざ笑うかのように「満」の文字が並ぶ。
「なんだか“満”っていう字ばっかだね。みんな満たされてるんだなぁ。」
「(笑)なにそれ。あれって満たされてるっていう意味なの?」
「そうだよ?知らなかった?(笑)」
「うん。初めて知った(笑)」
空室が全然なくても、二人は幸せだった。
二人はずっと歩き続けた。同じところを何度も。
歩いている間中、ずっとふざけっぱなし。
「俺思うに、“満”と“空”以外の文字があったら面白いのに。」
「例えばどんな字がいいの?」
「そうだな…例えば“静”なんてどう?みんな疲れ果てて寝ちゃったから静かにしてください、っていう…」
「(笑)なにそれ。“満”と何が違うの?」
「満たされたのよりもさらに上ってこと(笑)」
「さらに上なら“極”なんてどう?極めたよとか、極楽にいるようです、みたいな。」
「だめだよ~それだと極道の人が来てるとか、究極のプレイ中とか、変な想像されちゃうじゃん(笑)」
「(笑)そんな想像するのあなただけでしょ。」
「(笑)かもな。」
楽しい時間はずっと続く。
空室があったほうがいいのか。それとも、このまま空室がないほうがいいのか。二人にはわからなかった。
でも、今の瞬間がとても楽しくて幸せで、二人にとって空室はどうでもよくなっていた。
そんな二人の前に、ついに“空”の文字が。
「ついにあったね。俺たちのための空室が(笑)」
「(笑)うん。ところで“空”って、どういう意味なの?」
「あれは、“雲の上に上る気分になれますよ”ってことだよ。」
「雲の上なのに“雲”じゃないんだね(笑)」
「(笑)細かいところは気にしないの。」
「でも、私、歩きながらずっと雲の上に上る気分だったよ(笑)」
「(笑)俺も。」
そして二人は、手を取り合って「空(そら)の部屋」を目指した。
二人の願い事が叶うのは、それから程なくしてのことだった。
※この物語はまったくのフィクションです(笑) お題をもとに創作してみました。
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