一撃必殺

会心の一撃と言い換えてもいい。試合に負けて、勝負に勝つ。今日がそんな日になろうとは。

前から麻雀に誘われてはいたが、勝負事に向いた性格ではないことを理解しているので、本当にタイミングが合わなかったり、何かしらの言い訳をして避け続けていた。しかし、ついに断りきれなくなり、社会人になって初の闘牌をすることに。

学生の時も同期とやってカモられたので、自分はゲームにこだわれないんだと感じた。ひり付く勝負より楽しい遊戯が好きなんだ、と。

今日もスコアを見れば大敗もいいところ。まぁ負けても勉強代や、とある程度割り切っていても、俺も男のはしくれ。悔しさや惨めさはある。

そんな時にチャンスが訪れた。麻雀もポーカーのように、上がり手の難しさによって点が変わってくる。俺の手は役満と呼ばれる最難関の手を狙えるスタートだった。
流れも順調で、スムーズに欲しい牌が入った。上がりまでもう少し、そんな時、他の人がリーチを掛けた！
避けるべきか、行くべきか。逡巡があった。
だがゲームを楽しむと同時に、勝ちにこだわってみたいと奮起し、立ち向かった。
数手の後に、自分もあと一つで上がりまで漕ぎ着けた。
リーチした相手に、際どい牌でも逃げず捨てる。決して利口な打ち筋ではないだろう。だが、こちらも退けない場面だ。胃が軋むような場面の応酬、そしてその時は来た。
リーチした相手から役満を完成させるラストピースがこぼれ出た。
この一場面において俺は勝った。一撃で息の根を止める一手だった。

…

その後、スコアとしてはボロ負けと言える内容だった。それでも、少ないが大きい勝利で得られたボーナスにより、トータルで勝ちの目を拾えた。
きっとギャンブルに夢中になる人は、この刺激が堪らないのだろう。現に俺もこんな長文を書いている。
だが俺はやはり、ひり付く勝負より楽しい遊戯が好きだ。こんなストレスフルな遊びはしばらく要らない。また、ただ負けてやる気はないが、負けてもいいくらいの余裕がある時に勉強させてもらおう。