昔々恋をした

昔々恋をした。

出会いの場所はスロットなんて、色気も何もないところだったけど


機械をあやつる彼の手が綺麗だった。
その、骨ばった手に触れたかった。

顎のラインや鎖骨。
最初はただ遠くから見ているだけでよかった。


メガネの奥の目が優しげで
その目に見つめられたいと願ってしまった。


挨拶をするようになり、話をするようになり
一緒に隣同士で遊ぶようになれた。


彼の心がしりたくなった。
その手で触れて欲しかった。
その手に愛されたくなった。




ある日、彼を呼び出して告白した。
受け入れてもらったことが夢のようで
心だけは少女へと戻っていった。


まわりに嘘を突き通し、傷つけながら
秘密の恋を守っていった。

それまでの自分の世界が
いっきい広がった気がした。
楽しい事はたくさんあった。
毎日たくさんのメールもした。
毎日が輝いていた。


ある日、彼が嘘をつくまで
その嘘を問い詰めてしまうまで。
そして、その日恋は終わった。


携帯がならなくなった。
メールが二度と来なくなった。

休みの日の予定もなくなり
寂しさに飲み込まれてしまう
ともがいていた


そんな時、「無題」の彼とであった。


彼と出会い、別れ、寂しさが増してく。

その寂しさを埋めるため、私はまた
さまよい歩く。