背中に羽が生える前

友達に頼まれて、住江にある脳神経外科の病院でバイトした。

そこにいた男性看護師もバイトだった。

笑顔の素敵な、若いお父さんって感じで。

でも、ウチより１つ年上なだけやった。

そして、フリーやった。












なーんか、えぇなぁって感じて、バイト仲間と一緒にご飯を食べたりした。





















「今度、相談したいことがあるんやけど、いつか、あいてる日はある？」






次の休みの日、夕方から南港で会うことになった。

一緒にご飯を食べて

夜景を見て

海を見て…
















「相談ってなんなん？」

「うん、実はな、元カノと、以前、マンションを買って結婚するって話が出てて、

その家を買ってしまったらしいねん。そのときは結婚するつもりやったから、

書類に判子とか押してて…どうも、そのマンションを買ったらしくて、

オレんとこに、ローンの請求が…まあ、半額分やけど、来たんよ。」
































そんな話、ウチにされても。

結局、キチンと元カノに説明するか、

お金を相手に支払うように、してもらわないとアカンっていう事で、

話しは終わった。



















その日から、元カノの話はなく、

何度か、その彼と会うことがあって、

すごく気が合う気がした。

































笑顔が、すごく気持ちいい。

患者さんのことを真剣に考えて

すごく頑張ってる。




そんな所に惹かれた。

























付き合い始めるまでに、そう時間は掛からず、

ウチの武道にも理解を示してくれ、応援してくれた。
































ある日、急に引越しをすると言われた。

元カノに付きまとわれていると聞いた。
















ある日は、

突然、一緒に来て欲しいと言われ、

彼の車の中で、長い時間、話をして

日が暮れた。















元カノをなんとかしないといけないと

話しをするが、どうも辻褄が合わない。

その合わない部分を突き詰めると、










(*゜・゜)ンッ?








ちょっと待って、

もしかして、

二股？













そう、彼は、元カノに付きまとわれていると言って、

ウチと二股を掛けていた。














それを知って、ウチはホンマ、怒った。

怒ったからと言って

本気で殴ったりはせぇへん。









狭い車の中、右手で彼の左頬にピンタして、

ウチは車を降りようと、彼に背を向けた。








「コラッ、なにさらすねん!!」

















　次の瞬間、

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊﾞﾘﾊﾞﾘｯ







　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ウチは　雷に打たれたような

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　激痛とともに、

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　意識が飛びそうなくらいになり、

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　力と気持ちが

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　抜き取られた。






　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ウチは

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　シートに

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　沈み落ちた。





















　何が起こったのか













　何か、彼が言っている。

　何か、怒って怒鳴っている。



　何を、そんなに言っているのか。





　ウチには、気持ちも力も抜き取られ、

　ただ、そこに座っているだけの

　肉体だった。