夏！

思い起こせば今から数年前。

おいらは見知らぬ土地へ降り立った。

その地の名は「大阪」

なぜ東京在住のおいらが大阪へと降り立ったのか。

それは、なんてことは無い。まだ知らぬ女性との待ち合わせだったから。

その女性とは、とあるチャットにて仲良くなり、その流れで「会いたいね！」となってこーなった。

が。しかし。

相手はおいらの顔を知ってるが、おいらは知らない。
文字と声だけの会話で大阪まで繰り出してしまった自分。

当然、待ち合わせ場所に相手が現れる補償は無い。
それどころか、最悪、美人局の可能性すらある。

が。

それでも良い。

相手を信頼して行動して。
その結果がどーであれ、自分が会いたいと思った心に嘘はつけない。


そんな、ちょっと格好つけた言い訳を自分にしていると携帯が鳴る。
慌てて出てみると、そこには約束の相手の声。
「今、どこにいるん？」と大阪弁の彼女。

改札を出るところと返答すると。

「わかった。今行く」と。

改札を出て、それらしき女性を目で探すも見当もつかず・・・。

どーしたものかなー？と思っていると、誰かが肩を叩く。
驚いて振り返ってみるとそこには・・・。

「よっ！」と手を上げた女性？じょ・・・じょせい？？？

え？
なんともまぁ。ボーイッシュな女性がそこに居た。

まー。なんていいますか。

男なら誰しも、相手が美人なのを願うもので。

けど、現実はそんなに甘く無いわけで・・・・。

ぶっちゃけ、美人ではない彼女。

が。しかし。

おいらはそれでも満足だった。
２人が共通して会いたいと願い。

始発の電車に乗り込み、新幹線で大阪へ飛び立ち。

そして会えた現実。

きっとねぇ。おいら以上に女性は度胸が必要だったはず。

どこの誰だかわからない男と待ち合わせ。
そんなん、普通で考えれば怖くて仕方ないはず。

が。それでも会いにきてくれた。

「あ。ども」と挨拶もそこそこに、
「ほんまに来おったんやなぁ～」と彼女。

「自分、正直ですから」と言ったのが彼女の耳に届いたかどーかのうちに
「どこいくん？」と彼女。

えぇ。

どこ行くって言われても、右も左もわからないここは大阪。

「んーーー」と困っていると

「ほな。大阪って言えば大阪城やな！」と彼女。

えっと。

大阪城に行くことになりました・・・。

お城見学なんて、学生以来でして。

よくわからぬまま電車に揺られること数分。

目の前に飛び込んできたのはでっかいお城。

おお。これが大阪城か！

初対面の男女がお城見学。
なんともまぁ。絵に書いたよーな展開なんですが、困るのがその２人の距離。

いきなり手をつなぐわけにもいかず。
かといって遠すぎればおいら迷子。

そんな微妙な距離を保ちつつ、あーでもないこーでもないとお城の作りを堪能し。

「次、どこいくん？」とまた彼女。

この頃になると、おいらも根性すわってきまして。

「お好きなところへ案内して」と。

すると。

「んーーー」と困り顔。

しばらくして

「せや。カップルっぽい場所行こう」

え。まって。いきなりカップルなんですか？？

気づけば手をしっかり握って引っ張られる始末。

んー。

手を握って「ドキッ」とか無しですか。はいはい・・・。

そんなリードされっぱなしの一日が終わり。
帰路の時刻が刻々と近づいてきた。

「楽しかったよー」とおいらが言うと、彼女は
「また来てくれるん？」と。

ぬほーーー。

ええと。またってなんですか。またって。

おいら、こー見えても面食いなのよ！なんて言える筈もなく。
それどころか、自分がまた会いたいなんて思ってたのは内緒。

が。それを悟られたくなくて

「んー。どーかなー」なんて言うおいら。

もーね。アホかと。言ってしまって後悔。

が。

「交通費も馬鹿にならへんもんなぁ」と俯く彼女。

いあ。違う。
交通費なんてどーでも良いのだよ。
むしろまたスグにでも来たいんだ！

なんて声かければ良いかわからず。

「また大阪案内してくれる？」と意味不明な言葉を言うおいら。
「もちっ！」と笑顔の彼女。

あぁ。だめだ。

面食いどころか、そんなのどこかへ吹き飛んでしまった。

「スグ来る。」

そしてまた二日後に大阪へ降り立ったおいらでした・・・。



ま。そんなこんなでこの女性との恋愛は約１年近く続き。
交通費がもったいないからと言って、彼女の親御さんの車で就寝したり。
まー、思い起こせばハチャメチャな恋愛をしました。

ま。最後はあっけなく振られたんですけどね。
それも含めて良い思い出。

一人で過ごす今年の夏。

またこんな出会いがあれば良いなーなんて思います。