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そして誰も居なくなった

2009年12月23日 06:30

主人公はトム、35歳で住宅用の電気工をしていた
二ヶ月前までは土日も無いほどの忙しさ
だが体が不自由な妻と子供二人を支えるため
身を粉にして働いていた

今はどうだ

有り余るほどの食料と時間

確かに生命を維持するために自分だけで作り上げたソーラーシステムの維持には手間がかかるが

仕事をしていたときのことを思えば楽園だ

テレビは放映されてないが、DVDならいくらでもある

おそらく死ぬまでかかっても全部見切れないだろう

最近は他人が住んでいた家に侵入してプライベート動画やらを盗み見ることが楽しみになっている

やはり現実のほうがはるかに面白いからだ

だが

それと引き換えに彼が手に入れたものは、孤独

いや、正確には彼だけがあることをしなかっただけだ

孤独というのも、もしかしたら一万マイル彼方には、彼と同じように暮らしている人間がいるかもしれないが

これまでの彼の経験では、生きている人間の跡をみたことがない

孤独から開放される方法は簡単だ

人差し指の第二間接を曲げて

後頭部第二脛椎の突起を押し込むだけで良い


人類は最後にとんでもないものを発見してしまった


人類を滅亡させたもの


戦争でも、温暖化でも、隕石でも、エイリアンでもなく(ペンタゴンに侵入したら本当にたくさんのエイリアンの資料があった)


自殺スイッチ


もともと人類に備わっていた機能

なぜか左手人差し指でないとダメらしい


人類がその坂道を転がり落ちはじめたたのは一年前


おそらくアメリカでは「実行者」が百万人を越えたあたりが PONR (Point of no return)だったのだろう

「実行者」は定められた場所でおこなう法律ができたあたりでは もうすでに終わっていた

違反すれば死刑


人々は法律を守り実行する道を選択した


まぁお陰で私は、遺体に出くわすことはほとんどないが

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