- 名前
- ECHO
- 性別
- ♂
- 年齢
- 42歳
- 住所
- 京都
- 自己紹介
- セックスもしたいけど 単に一緒に寝たい そうしてお互い安眠できればそれでいい
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再会に添えて
2009年01月03日 04:25
私は、シルクロードの果て、小さな町で沈没しかかっていた。
すべてがどうでもいいように思えた。私を縛るものは何もない。
ガイドブックを開き、自分で自分に課す旅の目的も、嘘くさく思えた。
食事をとる以外は、一日中すえたベットに体を横たえていた。
体になんの力も湧かなかった。このまま、死んでしまうのも、幸福に思えた。
そうして、二週間ほどが過ぎた。ある日私は視線に気づいて目を開けた。一人の男が私を見下ろしていた。
男は微笑んで、こう言った。「このノートを差し上げましょう」
ぼろぼろになったノートには、日本では決して語られなかった言葉がつづられていた。
無数の旅人が、無数の筆跡で、日本では決して語られなかった本当の言葉をつづっていた。
怒ったように跳ねている文字があった。涙ににじんだ文字もあった。
本当は何故旅に出ようと思ったのか、本当はなぜ沈没してもいいと思ったのか、本当は…。
私は読んでいるうちに、涙が止まらなくなった。
他の国の旅行者が不審がるのも気にせず、私は一晩中、声を上げて泣いた。
そして、次の朝、シルクロードの果てへと旅立った。
そのノートをくれたのがあいつだった。
沈没することを恥ではない。
パッケージ・ツアーの旅人には、沈没することはあり得ない。
沈没は、自分の足で歩こうとした旅人にだけ起こる。
あいつがくれたノートを、私は旅の間中、書き写した。
日本で語りたくても語られなかった言葉を必死で書き写した。
どの言葉も内戦や流血を語ってはいなかった。
ただ本当のつぶやきが続いているだけだった。
そして私は日本に帰り、その言葉をパソコン通信で流した。
そのノートは、今もシルクロードを旅している。
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