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愛のメモリー

2008年09月06日 20:57

これは過去のお話。
自分が電車に乗っていて目の前で見たことである。
今でも思い出すと目頭が熱くなる。

この光景を目の前で見たら皆さんはどう感じるだろうか?











中途半端な時間ということもあるのだろう、
乗り込んだ電車は意外と空いていた。
空いている座席に着く。すると、
おや?斜め前に座っているカップルの様子が・・・?(ポケモン風に)

小さな声でひそひそ言い合っているのでよく聞こえないが、
どうやら口論している様子。

痴話喧嘩も相手がいてこそ。
思う存分喧嘩して仲直りしたらいいじゃない。
半ば微笑ましい、温かい気持ちでカップルを見守る。
そう、まるでさっきまで人が座っていたイスのような温かさで。


だが、喧嘩は終わらない。
彼女が何か言い、彼がなだめる。
やめろよこんなところで。もっともな意見である。
だが感情的になってしまっている彼女は、
なだめようとする彼の態度がまた気に入らない。
結果、徐々にヒートアップ
ひそひそながらも確実に大きくなっていく声。

そして、ついに時は来た。


「だからやめろって・・・。ここ電車の中だよ?」

何度目だろう。彼が幾度となく繰り返したなだめの言葉が、
ついに彼女の心の堰を破壊した。
今まで彼を慮って心の奥底に閉ざされていた言葉が溢れ出す。
そうして放たれた真実は、あまりにも悲しいものだった。




「本当はHのときだって全然気持ちよくないんだからね!」



「えっ・・・?」





全米が、泣いた。




もちろん僕も泣いた。むせび泣いた。
近くに立っているサラリーマンも肩を震わせて泣いている。
うん、きっと泣いている。
近くにいた全員が俯いた。


言われた彼は完全に止まっている。
時間よ戻れ!ちょっとだけ戻れ!
きっと彼はそう願ったはずだ。


「ごめん・・・」


しかし悲しいかな。
一度進んだ時計の針は戻らない。
一度放たれた言葉は戻せない。
彼は一言そう謝ると、それきり黙りこんだ。
そっと彼女が手を伸ばし、彼の手を握った。


「ごめんね、言い過ぎた。ごめんね?」

口に出さずとも伝わる想い。
握られた手を見た人すべてが、彼らが仲直りしたのを理解したろう。
あとは今後の彼の奮起を祈るばかりだ。

次の駅でカップルは降りていった。
もちろんふたりの手は固く繋がれたまま。


今日、辛い辛い真実を告げられた彼は、
ひとりよがりでない、今よりも良い彼氏となれるだろう。
今日、彼氏の新しい表情を知った彼女は、
今までより相手を気遣える、優しい彼女となれるだろう。
大丈夫。そうやってふたりはわかりあっていくものだから。


そして電車に揺られながら願う。
ふたりの行く末に幸多からんことを。
僕は涙に濡れたハンカチをそっとポケットに戻し、窓の外を見た。


今日の空は今にも泣き出しそうな色をしていた。

このウラログへのコメント

  • めんぼう 2008年09月06日 23:17

    喉の奥の方がギュッと熱くなりました(TT)

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