一番感謝を伝えたい人は？

五十を過ぎた頃、僕は君と出会いました。三十代後半にさしかかった君は、まだキラキラとした華やかさを身にまとっていました。夢を語り、大人の女性となるための最終章にさしかかっていました。
「君の夢の全ては背負えない。でも、半分は僕がしっかり背負う。君の夢を僕の夢にしてくれ」
彼女は僕との人生を選んでくれました。淑女の如く、娼婦の如く振舞う彼女に、僕は夢中になりました。一度も彼女から「好きです」と言われたことはありませんでした。でも、深い愛情を毎日感じて暮らしました。時間が経つにつれ、僕の好きだという思いは募るばかりでした。
「彼女に会えて、生まれてきて本当に良かった」と僕は今でも思っています。愛とは何か、永遠の命題を彼女は僕に教えてくれました。
共に暮らし始めて十年目、突然彼女は天に召されました。僕は現実を受け入れることができず、心は砂漠を彷徨します。三年が過ぎ、断ち切れない想いを心の奥底にしまい込んで、僕は日常生活を送れるようになりました。　
生まれてきて良かったと思わせるほどの愛情を教えてくれた彼女。
ありがとう・・・・本当にありがとうございました。