ゆっくり､やすまれて｡

いつでも言える､だなんてどうして思えたんだろう｡
明日何が起こるかわからないのに｡


今日も､いつもと変わりない1日が過ぎると思ってた｡
いつもと変わらない､のんきな日が｡

どうして､尊敬しているところがあると伝えておかなかったのだろう｡
あと一年半の間､いつでも会えると思ってた｡
廊下ですれちがうと思ってた｡

そんなこと､何の保証もないのに｡



今までお世話になりました､と｡
ほんとに､と｡
ありがとうございました､と｡
お疲れさまでした､と｡
生意気な学生でごめんなさい､と｡
あなたの演奏解釈は妥協がなく明快だった､と｡


送る時に､
泣いてなんかいないで､
きちんとはっきり音にしなくても､
心の中で､
伝えなきゃいけない｡


たくさん生意気を言って困らせたことが､ずしんと後悔を招く｡
いま､たくさんの後悔がよぎりそうで｡
でも実感がなくて｡


ありがとう､と言葉ではもう伝えられない｡
ごめんなさい､と言葉で伝えられない｡
でも､音楽なら届くかしら｡
風が､伝えてくれるかな｡

それは､あたしたち自身の心を鎮めるための作業にすぎないけれど｡
でも｡
何もしないより､よっぽどましだ｡