スイカノスタルジー

今年、はじめてのスイカを食べた。
近くの農家が開いている直売所で買ったスイカは、よく熟れていて、とびきり甘かった。

思い出すのは、子供の頃。
家のすぐそばにスイカ畑があって、出荷には向かない熟れすぎたものを、よくもらった。
今みたいに、命の危険を感じるような暑さではなくて――
夕方、窓辺に座って、庭に足を投げ出しながら、水で冷やしたスイカを頬張る。
そんな夏休みの風景が、ふいに浮かんでくる。

映画『インサイド・ヘッド』に出てくる、ヨロコビとカナシミがまじりあった、あの記憶の玉みたいに。
きっと年を重ねて、「ナツカシ」が、近くに寄り添うようになったからだろうか。
夏とスイカは、心に沁みるノスタルジー。

ゆったりとした夏の夜に、
少しだけ甘く、少しだけ艶やかに、
思い出が、舌の上でとろけていく。