エピソード

静かだ、心も体も全てを任せて。
両手を広げて空を包み込むように、そして海に体を預けた。
何の考えも無くし、無心になり、体の緊張も解け、そう静かに浮かんでいる。

俺は。。。今どこにいる。俺は。。。何をしている。
遠い過去の記憶が甦る、あいつら何してるんだろう。。。

疲れた、あの時、体から魂が抜けた。
「降りてくれ」
「これは上の判断なのか」
「そうだ、すまない」
「何故？」

「貴方が動けば、犠牲者が増える」
「もう何もしないで、ほっといて」
「正義がなぜ悪い」
「このまま我慢しろというのか」
「あいつら排除して何が悪い」

「なぜ、自分で責任をかぶるの？」
「他人のやったことをを背負う必要はないでしょう」
「俺が責任をとらなければ。。。」
「周りに影響を及ぼす、自分が導いたから」
。
。
。
何しているんだろう、あいつらは。
待っているだろうか、それとも見切りをつけているだろうか。
今となっては遅いかもしれない。

お陰で、白髪が目立つようになってきたぜ。
子供染みていた俺が情けない。
いつまでも純粋無垢じゃ、馬鹿だね、俺は。

それにしても、心地よい。
波の音、子どもたちのはしゃぐ声。。。耳が波にさらわれながら、かすかに聞こえる。
空は青く滲んで終りが見えない。

でも、俺の心は死んじゃーいねぇ。まだまだやれる。
あいつらを解放するまでは戦い続けなければいけない。

プライドは捨てた、ただし、いかなる場合でも威厳は保ち続ける、それが俺だから。

俺はまだ負ける訳にはいかない。

空は青く、海は蒼く、そして回りの静かさが心地良い。
いつまでも、こうしていたいものだ。