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あなたの声が好き・・・その1

2021年04月01日 00:27

あなたの声が好き・・・その1

今夜は、「あなたの声が好き」の章からアップしてみますね(^▽^)/

このページもあたしの好きなシーンなんですよね(^▽^)/

皆様、真夜中のひと時、いかがお過ごしかしら?


あなたの声が好き・・・その1

愛せない感情・・・それが、夏樹さんと雪子さんが別れを決めた本当の理由・・・。
そう言えば、さっきも京子に対して同じように言っていたけど、雪子さんの時とは違うのかしら?

「確か、さっきも京子に対して同じ言葉を聞いたように思うんですけど、雪子さんの時とは違うんですか?」

京子はね、愛されたいと望み、自分だけの愛を求めようとしたの」

自分だけの愛を・・・京子が求めていたのは自分だけのために存在する愛?

「雪子は愛してあげたいと願い、移りゆく季節のように愛に寄り添おうとしたの」

雪子さんは、愛してあげたいと願い・・・

「あっ!それって、もしかして?」

「ん・・・?」

「あ、あの・・・それって、もしかして?私が分からなかったっていうか、知りたかったっていうか、雪子さんと京子のどこが違うの?っていう・・・あの・・・」

「あら・・・?な~に?雪子に会った時に訊いたんじゃなかったの?」

「いえ・・・あの・・・雪子さんに教えて頂いた事は教えて頂いたんですけど・・・その時は夏樹さんに対しての気遣いの違いだとばかり思っていたんです・・・はい・・・です」

「ふふっ。まあ、そんなところだとは思ってたけどね」

そうだったんだ・・・。これが、雪子さんと京子の違いだったんだ!
愛されたいと望む京子・・・愛してあげたいと願う雪子さん・・・。
愛に包まれたいと望む京子・・・愛で包んであげたいと願う雪子さん・・・。

夏樹さんに愛されたいと望み、夏樹さんに愛されていた京子だったはずなのに・・・
愛されていたはずの愛の姿に、居るはずのない雪子さんの影を追いかけてしまった京子
だから、いつも愛を探してばかり・・・春も、夏も、秋も、冬も、来る日も、来る日も・・・
あるはずの愛が見えない京子は、夏樹さんに愛されたくて、霞んでいく愛を探し続けていたんだわ。

でも・・・それじゃ、どうして夏樹さんと雪子さんは別れを選んだのかしら?
だって、雪子さんの性格っていうか、愛し方っていうか、どう考えても別れには繫がらないように思うんだけど。
そういえば、夏樹さんが前に、雪子さんとはしょっちゅうケンカをしていたって・・・。

「あの・・・今の私が描いている雪子さんは・・・」

「大人しいあやつ?物静かで優しいあやつ?」

あっ、雪子さんから、あやつに変わっちゃった!

「ええ・・・まあ。でも、確か以前に・・・」

「雪子ってね、季節の中で生きているような子なの」

「季節の中で・・・?」

「そうよ。普通の人は季節を覗いては大丈夫そうだなって思うと季節に触れるんだけど。雪子の場合はちょっと違っていてね。いつも季節の中にいるの。春の暖かい風の中、夏の暑い日差しの中、秋の模様替えが始まる中、そして透き通るような空気の中の冬も。雪子ってね、いつも季節の中で踊ってるような子なのよ」

「はあ・・・あの・・・なんていうか・・・」

「雪子って可愛いでしょ?だからね、雪子は小さな身体を全部を使って愛してくるの」

「はあ・・・」

「なに、ため息ついてんのよ?」

「だって・・・と、言いますか・・・」

「だから、いつもケンカにもなっちゃうのよ。こんにゃろめ!こんにゃろめ!ってね!」

「とはいっても・・・なかなかに・・・」

「雪子はね、大人しくて物静かだけど、控えめじゃないのよ。言ったでしょ?あやつは季節の中で踊ってるような子だって!四季ってさ、過ごしやすい日ばかりじゃないでしょ?雨の日も風の日もあるし、台風だって来るし、大粒の雪だって降るし。自然ってさ、優しくて怖くて、それでもやっぱり優しくて・・・。じゃないかしら?」

「いや~、余計にこんがらがってくるといいますか・・・です」

どこか嬉しそうに話す夏樹の言葉の中に、大人しくて物静かな雪子が見え隠れしているみたいで
聞いている直美も、時折、笑みが浮かんでくるから、その片隅に追いやられてしまう京子の姿が
同情してはいけないと分かっていても、どこか不憫に思えてしまう視線が直美には寂しかった。

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