- 名前
- 松田文学男爵
- 性別
- ♂
- 年齢
- 60歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- 僕はアンドロイドなんだ。 アンドロイドだって夢は見る。 でも、それはキミたちのように...
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青い洗濯バサミ
2020年11月11日 23:30
小学生の頃から犬を飼い始め、両親は不仲だったので家に居たくない私は毎日犬を散歩させ、当時は友達と遊ぶより犬と一緒にあちこち徘徊してた。
私が幼少の頃から父はDV癖があり、親の罵声が飛び交う中怯える犬を(リビング・廊下・玄関以外の場所に入れてはいけないルールだったが)私の部屋に匿う学生時代を過ごしてた。
そしてついに高校生の頃、両親は離婚、飼っていた犬は父が預かり私は母へついていくことになった。
離婚は本当に突然で部活中に突然先生から呼び出され、自宅ではなく母方の祖母宅へ帰れと伝えられ、祖母宅へ行くとタコ殴りにされた母がいてああやっとか思う一方で、犬がいないことに涙が出た。
年を重ねるごとに激しさを増すDV父からついに母は逃げることが出来たが、犬はどうしても連れていくことができなかった、緊急避難だったので持っていけない荷物も多く、今では一枚もあの子の写真はない。
私が犬に関して知っていることは、母からのきいた「父が里親募集するらしい」というたったそれだけ、悲しくて悲しくてでも母にも当たれなくてずっと悔やんでいた。
大学生の頃、寝てた時にカチャッカチャッカチャッとあの頃お部屋に入れてと催促する犬の足音が数度聞こえた。
会いに来てくれたのかな、たぶん年齢的に老犬だからそろそろだったんだろうなあとなんとなく考えていた。
そこから毎日のようにネットで里親情報や犬ブログを漁り続け、あの子は無事里親の下で幸せに暮らせていたのだろうかと必死に探したが結局何も出てこなかった。
今はもう20代、結婚してのんきにしてる小梨主婦だけど、数週間前にまた夢を見た。
青い洗濯バサミをベランダから落としてしまい、庭を見やるとたくさん犬を連れた老人が洗濯バサミを拾おうとしている
ベランダ越しから私は老人に「いいですよ、捨ててください」というも洗濯バサミを拾い上げ、玄関先へ向かおうとしている。
玄関あけると色んな犬種の犬たちが穏やかな顔でこちらを覗きこんでいて、老人がそっと私に青い洗濯バサミを手渡してくれた。
私の手の中にあったのは洗濯バサミのはずなのに、なにか生き物のように温かくもぞもぞと動く生き物のようで、そこで目が覚めた。
その翌日から憑りつかれたように何軒もペットショップを回り、青い洗濯バサミの正体を探してやっと見つけたのはコバルトブルーのセキセイインコの雛だった。
優しく一緒にいるインコを羽繕いする姿をみて、こんな優しい子を一羽で連れて行ったら可哀想かなと思ったけれど、店員さんと一緒に挿し餌をして触れたその子はやっぱり夢に見た青い洗濯バサミで。
悩んで悩んで一日中考えたけれど、絶対にまた後悔すると思って、やっぱり翌日にそのインコをお迎えすることにした。
あまりスピリチュアルなことは信じていないけれど、大学生の頃と、数週間前に見た夢はあの子が虹の橋を渡ったこと、そしてまた生まれ変わったことを教えてくれたんだと思う。
お迎えする際にショップでもらった血統書を確認すると生年月日が当時の犬と一致していて益々驚いた。
私の中で飼っていた犬と今いるインコは全く別の命であり、重ねずにその子のことを見ていようと心に決めているけれど、うれしい時のキラキラした目や気分の変化がそっくりで、また会いに来てくれたのかなと思ってしまう。
今度こそは私の手で一生面倒見て見送ろうと誓って大切に大切に育てているその一方で、あの犬はどんな一生だったのかせめて残っているなら写真だけでも、もし里子に出されたなら飼い主と接触を取って知りたい私がいる。
無責任な子供だった私が今になって、それに年齢的にもうとっくに虹の橋を渡ってしまっているあの子の安否を知りたいという気持ちが心の片隅から消えない。
でも今は初めて育てるインコで毎日模索しながらも、少しずつ心を開いてくれる姿を見て幸せな日々を送ってる。
こんな私でいいのかなと葛藤し、今いる子を大切にしたい気持ちの中でぼんやりとあの子がまだ心の中にいる。
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