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愛するアーリーン

2018年04月19日 22:57

ノーベル物理学賞を受賞した天才物理学者のリチャード・ファインマンは、24歳の時にアーリーン・グリーンバウムと結婚する。

なぜ若くして急いで結婚したのかというと、アーリーンが結核感染していることがわかったからだった。

彼らの新婚生活は闘病生活に変わり、ファインマンはアーリーンに尽くした。

結婚から3年後にアーリーンは亡くなる。



ファインマンの死後、彼の遺品の中からアーリーン宛の手紙が見つかる。

それは亡くなった妻宛の送られることがない手紙だった。



アーリーン・ファインマンヘ 
194610月17日 木曜日

 愛するアーリーン
 誰よりも君を大切に思ってるよ。
 君がどんなにこの言葉を聞きたがっているか僕にはわかっている。でも僕がこれを書くのは君を喜ばせるためだけじゃない。君に手紙を書くことで、僕も内側から温かくなるからなんだ。前に手紙を書いてから、おそろしく長い時間がたった。もう二年近くになるけど、君は僕がどんなに現実的で頑固な人間か知っているから、きっと許してくれるだろう。君に手紙を書いてもしかたないと思っていたんだ。
 でも今は、以前は何度もしていたのに、あれ以来ぐずぐず遅らせていたことをするのが正しいとわかった。君に愛してると伝えたい。君を愛したい - これからも君を愛する。
君が亡きあと、君を愛するということがどういうことなのか、頭で理解するのは難しい - でも僕は今でも君を励まし、君の面倒をみたいと思っている。そして君に僕を愛し、僕のことを気にかけていてほしい。君と話し合える問題があったらいいのに - 君とささやかな計画を立てたい。今の今まで、一緒にそれができるとは思ってもいなかった。何をしたらいいだろう。一緒に服をつくろうとしていたよね。それから中国語を習うとか、映写機を手に入れようともしていた。今僕には何ができるだろう。ああ、君がいなくなって僕は一人だ。君は"アイデアウーマン"で、思いもよらぬ冒険を企てるのはいつも君だった。
 君は具合が悪くなったとき、僕に与えたいと思っていたものや、僕に必要なものを与えられないと嘆いていたね。そんな心配は必要なかったんだ。あのとき言ったとおり、僕は君をいろいろな形で、とても深く愛していたのだから、それ以上、ほしいものなどなかった。そして今のほうがもっと強く信じられる - 君はもう何も与えてくれないけれど、僕はあまりにも深く君を愛していて、誰か他の人を愛そうとしても君が目の前に立ちはだかっている - でも、そうしていてほしい。死んでいる君のほうが、生きている他の誰よりはるかにいいんだ。

 きっと君は、そんな僕はばかげていると言い、僕が申し分なく幸せになることを願い、僕の前に立ちはだかることなど望まないだろう。二年もたっているのに、僕にガールフレンドの一人もいない。(君以外にはね)と聞いたら驚くに違いない。でも君にも僕にも、こればかりは仕方ない。なぜかは僕にもわからない。たくさんの女性に会い、中にはとても感じのいい人もいたし、僕もずっと一人で取り残されることは望んでいない。でも二回か三回会うと、みんな灰みたいに感じるんだ。僕には君しかいないんだ。君は実在している。
 僕の愛する妻よ、君を深く想っている。
 僕は妻を愛している。でも妻はこの世にいない。
                                     リッチ

追伸 この手紙は出さないけれど許してくれるよね。君の新しい住所を僕は知らないんだ。




最期まで献身的に妻を支えた続けたファインマン。、一人になってからは放心状態になり涙も出なかった。

しばらくしたある日、街を歩いていた彼はショーウィンドウに飾られていたあるワンピースを見かける。

「ああ、アーリーンが好きそうな服だな」

思った途端、初めて涙が溢れ出して止まらなかった。




ちなみに、ファインマンはアーリーンを亡くした後、死ぬまでに2回結婚している。

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