愛こそは全て

ジョンが言った
愛こそは全て

秋の夜長に戯れ言を
宣う

僕は21の時に
人生最大の愛を勝ち取った
はずだった

でも あのコを傷つけ
自分さえも傷つけ

東京シティーの片隅に
捨てられた

でも救いはあった
音楽だった
詩(うた)を作り、歌い、
疑いを晴らす
そして、天下は手中に
あると錯覚していた

若かった
ガキだった
パンクスだった

歳月は非情な速さで
若さを蝕む

ある日小娘が
生意気にも俺に
問うた
「いつも愛がわかった風に
言いますけど、愛って何ですか？
教えて下さい！！！」
「！？」
おれは一瞬答えに窮した
そして
「うるせえ～！俺も探してんだよ！」
精一杯振り絞って
出た言葉がそれ
隣にいた、俺の後輩であり
敬愛する友人は
「ひゃー、今のユキミザネさんの
言葉染みるな～」！
と半分小馬鹿にしたように
それでも、嘘のない言葉に
感心したように
おどけた調子で言った。

それから、無駄に歳月は流れ
あの時、手にした筈の愛は
今もまだ、その手に
温もりすら戻っていない。

秋の夜長の
戯れ言
けれど、真実の話。

その後、あのコは幸せを掴み
俺の望みの半分は
愛する人の幸せを願うという
愛で満たされた。

荒野に自らの屍をさらそうと
アラスカの果てで伝説になろうと
平和の名のもとに銃弾に貫かれようと
悪意とエゴと欺瞞と保身と
善意と徳と礼節とサクリファイス
と経済と文化と物欲と消費と
節制と禁欲と自己顕示欲と
神経症とパラノイアと様々な
様々な様々なカオスの中で

愛はきっと
その中に紛れて
手招きしている

と
固く信じて
生きる
そして
死ぬる