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鉄道(電車)に関する思い出 0系新幹線
2014年10月14日 16:46
実にタイムリーなお題
それは今から30年以上も前のこと、当時親しくなった女の子がいた。
一つ違いの彼女は東京で専門学校生、私は香川の田舎で働いていて彼女が夏休み帰省しているとき知り合い恋に落ち、夏休みも終わりに近づき彼女は再び東京へ戻っていった。
当時は今と違って携帯電話など考えもつかず、下宿先に自分の電話などなく連絡取る方法は手紙か公衆電話だけだった。ある時仕事先の電話が鳴って出ると電話の相手は彼女だった、東京から公衆電話で香川に掛けると硬貨が滝のように落ちた時代の話だ。
「もしもし、○○…私です、声が聞きたくて電話した、もう切れます」
どこかでつながっていたい一心で彼女はダイヤルを回させたのだったが、無常にも私の次の声は彼女に伝わることなく電話は切れプープープーという信号音だけが聞こえていた。
お互いそんな思いだったのである日思い切って東京へ行くことにした。
とはいえこれまた今と違い瀬戸大橋はなく、よって夜行高速バスだの早い新幹線だのは当然なければ航空機は高くてとてもじゃなく若者が乗ることは出来ない。そこで朝早く国鉄に乗り宇高連絡船に乗り換え電車、新幹線を乗り継いで東京まで行き、着いたのは午後3時か4時だったと思う。新宿東口で、と場所を決めていて、時刻が近づくと向こうら学校帰りの彼女がやってくるのが見えた。
その日あった彼女はいつものように明るい表情ではなく幾分暗い感じの顔だった。
それからあまり話しもせず近くの喫茶店へ行ったような気がする。
二人の交際、とはいっても今のように解放的な時代ではなくプラトニックな交際だったのだが、なぜか両方の親には反対されていた。その為か、もう付き合うのをやめようとかそんな話をしたようだ。今なら数時間かけ折角東京まで会いに行って、それもお互い好意を持っていれば当然愛を確かめるべくホテルでもいくのであろう。
しかし、当時は考えもしなかった・・
私は翌日仕事なのでこのまま最終の新幹線で帰る時間が近づいてきた。
東京発20:00のひかり95号新大阪行きだったようだ。
東京駅の新幹線ホームまで彼女は見送りに来てくれたが、さほど話もしなかったと思う。
発車を知らせるホームの電子音が鳴る
きつめのパーマを掛けた彼女の表情が少し曇り寂しげだった。今でもその表情は忘れていない。
まだ乗り込んできているお客さんが居たけどかまわず彼女を抱きしめキスをした。
それは熱い口づけだったし、彼女もそれを待っていたようだった。
乗車を促す放送があり、それに乗り込むとまもなく新幹線のドアがプシューと音を立ててて閉まり、窓を通して彼女の顔が見える、どうしてか・・・彼女と会うのはこれが最後なんだな・・・そう感じたのをはっきりと覚えている
一時期流行ったシンデレラエキスプレスのずっと以前にそんなことをやっていた。
今は引退した0系新幹線が静かに動き出し、それにあわせるように彼女も動き出した。 それが彼女をみた最後だった。私は新大阪から急行に乗り継ぎ、深夜の山陽本線を走る。
前に座った若者が高級車の話をするが相づちを打つ程度で話は入ってこず、真っ黒な窓の外をぼやっと見つめては彼女の事を考え、別れ際の表情が浮かぶ。
元来た路線を引返し帰宅したのは翌朝6時だった。
東京駅のホームで感じたようにその彼女と二度と会うことは無かった。
何もないピュアな関係、それだけに数十年たっても色あせることなく心に残っているのかもしれない。
新幹線0系・・・ホームと悲しげな出発を告げる電子音のチャイムを忘れることはない。
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