思い出のツーリング・・・能登編

とある年の　８月２８日
地下鉄の窓に映る自分を見ていた

やがて　地上に出ると　眼前には夕闇の多摩川
一本　見送ろう・・・
川面を見ながら　ぼんやり　でも　一点を見つめる

明日　どこに行こうか・・・

日本海が見たい！
抑えきれない衝動にかられ　次の電車に飛び乗る

慣れた手付きで　早々に荷造りを済ませ
興奮を抑えつけながら　仮眠をとる

眠った　と思った次の瞬間　目覚ましが鳴る
　
キーを手に　ブーツを履き　階段を降りてゆく

「待たせたね！」　相棒　”ＧＰz９００Ｒ”

いつも通りに　荷物を積み込み
いつも通りに　夜明けの住宅街を　静かに押し歩く

幹線道路に出ると　決まった儀式が始まる
イグニッションを捻り　エンジンに火を入れる　
「ドヒュ～ンッ」　よし！　いい子だ

住宅街を抜け　中央フリーウェイへ
大好きな　中央の景色が　やがて緑に包まれる
高速で巡航しながら　左右にバンクすると
遠心力と重力とが　バランスする感覚　今日も乗れてる・・・

飛騨高山を尻目に　最初の目的地　乗鞍へ
一般道で国内最高標高の地　乗鞍スカイラインへ・・・

登っていくと　やがて　雲に届く
信じられない光景が　待っていた
頭から足元へと　雲に包まれてゆく
そして　雲上へ抜ける
雲に浮く　鳥のような感覚　
”ライダーズハイ”　バイク乗りにしか得る事のできない　特別な脳波
眼下に　雲海が広がる絶景

能登半島に着く
料金所のおやじさんが　人なつっこく話しかけてくる
暫く話し込んでしまった・・・首都高じゃ考えられないな　こんなコト♪　

能登の海が　優しく迎えてくれている　あぁ　来て良かった・・・
こんな景色を見るために　こんな人に会うために　俺にはバイクがある
駅前の土産物屋で　気さくなおばちゃんに「気を付けて」と言われながら
輪島塗の雛人形を　そぉっとタンクバッグにしまう

さぁ　帰ろうか！　相棒・・・
最高の想い出を　ありがとう・・・