瞳を、閉じないで

どれがどれだか分からないと言われようと何と言われようと
２２歳年下の、これまた帰国子女の元かの
入院した時の顛末は
前に書いた


「どう？元気？退院したかな？忙しくてごめん連絡しなくてさ」

「うん、あたし、がんかもしれない」



そう思ってた。
そういう種類の病気だろうなあ、って。

「通院してるの、
　死ぬのかな、あたし」


「大丈夫だよ、転移とか部位とかにもよるけどさ、今治る病気になってるから」

「うん」


元かののＬＩＮＥのホーム写真が、幼稚園の頃の運動会の写真になっていた。
何かを感じているんだろうな、とは思ってた。
悪い予感は当たっていた。
ほんの僅かな日々だったけど、新宿で、池袋で、楽しかった日々が
記憶がよみがえる。

僕より先に死ぬんじゃない、
２２年も無駄に生きてきてるんだよ、これからじゃないか、あれもこれも買いたいって
あそこもここも行きたいって言ってたじゃないか・・・・・・

「寝るね、おやすみ」

「うん、おやすみ」

ＬＩＮＥが途切れた
声にならない声が
のどの中を駆けめぐる

死ぬんじゃないぞ、まだこれからじゃないか・・・・・・

瞳をとじて　平井堅