【お題日記】あなたなら何倍返し？

何倍も何十倍にもして仕返しする。
当然のことである。
僕には仕返しするべき権利のようなものが当然あるように思われるからだ。

そのモヤモヤな権利の根本原理、それは言われなき苦難をしいられていることに由来している。
言われなき苦難などと言うと些か穏やかでない感じだ。だが、本当に理不尽な苦難と思えるのだ。せっかく遠路遙々日本海やら太平洋へとやって来たというのに、全く釣れない(魚の影もかたちもない)ということがある。夜中に自宅を出て、一睡もせずひたすら高速道路を走り、息も絶え絶え疲労困憊で目的地に辿り着く。身体は疲れているのに、精神的には何かしらに憑かれてギンギン冴えていて仮眠を摂ろうにも少しも眠れないのだ。諦めていそいそと車を抜け出し、まだ明けやらぬ海へと支度をして歩き出す。
やがて辺りが白み、夜が明け始める。うっすらとした明かりが辺りを浮かび上がらせる。波のうねりが絶えず緩やかな曲線を描きながら足下に寄せてくるのが視覚で解るようになる。その時点では、もう既に百近いキャストを繰り返している。
すっかり明るくなり、ジョギングやら犬の散歩をする人の姿がそこかしこに現れ始める頃には僕の集中力も何処かに消え失せてしまっている。
そんな時には必ず仕返しを誓うのだ。
「この借りは倍返しだ！」と。
そして空腹を富山のブラックラーメンで満たす頃には、そんな悔しい気持ちも何処かに消え失せてしまっているのである。