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干拓地奇譚(24)

2010年08月27日 12:14

(再開。ただ保証いっさいなし)

ーーー

おいちゃん、チヌは夜釣りだぜ。。。

しかし。。。。。ないでるなあ。奇妙な島の奇妙な朝だ。

A 海の海岸線は、昔からの釣り場がどんどんと廃れていってる。

無言のおいちゃんと、ならんで仕掛けの用意。

ベイトやジグをひいてみてもいいね。しかし今日はエサも用意してある。イソメ。このあたりでは「オオムシ」っていうやつ。なまなましいピンク色の、多足のオオミミズとでもいう感じ。釣りやらねえ人は、見たらギャっというような代物だ。

俺は釣りについちゃあもう気違いのレベルで好きだし、おいちゃんもそれを知っている。しかし、やっぱりどうも解せない。あの冷徹でシニカルなおいちゃんが、いわゆる「やさしさ」だか「親近感」で俺を此処へつれてくるわけがないんだ。海岸線じゃあもうまともな釣りが出来ねえから、つれていってやんぞ、という事かなあ、と最初は愚かにもおもえた。アホだわ俺。んな事あるわけない。

それに、何なの、あの先客連中??どう見ても、漁業とかとは無縁だし。

。。。。。。。。。。。。。



グリーン海水に、銀鱗がおどる。

遠投するプラグ。今日は赤白のやつ。たまに来る高目の波間に、たしかに魚影。フッコだ。

ガツンとくる。うほほい!やっぱエサ釣りよりはコッチがいいわ、俺。安物の投げ竿をあやつって、がんがんとまきとる。40センチはあるいい型のを、タモつかわずにひきづり上げた。

おいちゃんは岸壁に近い、テトラポットへと移動。いわゆるフカシ釣りをやってる様子だ。投げ竿もつかうみたいだ。カレイもくるかなあこのあたり。でもメインはメジナ狙いか。

100円ショップニッパーで苦労して針をはずす。エラに紐とおし、浅瀬にザブンとはなす。観念した感じでおとなしいフッコを見て、テトラポット上のおいちゃんの姿を確認しようと顔を上げ、。。。

あれ?

どこいっちまったんだ?。。。。

俺は竿をおいて、おいちゃんが座っていたあたりへとむかう。周囲を見渡し、すっかり影も形もない事に、はじめて気づく。

おいちゃんが放置してる竿は、いちおう固定されてて、浮きが海面でのんびりただよってる。俺はしかられるのを覚悟で、竿をとりあげ、リールをまいて見た。

ふむ。エサとられてるじゃん。

しかたがないので、そのまま流し竿を仕掛けに注意しつつ、テトラポット上においた。

再度、顔を上げて、あたりを見まわす。俺らが到着した桟橋はすぐそばで、その向こうには、海上保安庁の船、更に向こうに、あの、機関砲をそなえた外国船(船側に一切の刻銘なし)。

春にはめずらしい、ギラつく日光にてらされながら、突然、俺は異様な孤独感におそわれた。論理的には、ここに放置されるなど有り得ないわけだが、こういう場合、その合理的な判断が、なぜかどっかへフっとぶ。

生あたたかい、平和な陽春のなかで、俺はなぜか、寒気をおぼえはじめた。

なんだあ、このイヤな感じは。。。。震えがくるが、なにしろ歯をくいしばる。

本能的に、内陸へと目がゆく。例の、真新しい変電設備めいたものの柵から、ブゥゥゥゥンという唸りがきこえてくる。

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