Book of Love

Book of Love







「愛の本」という本が街のちょっと奥まった路地に
置いてあるそうです。


その本は不思議な本で
人によって表装や厚さ，中身まで違って見えます。


その本が置いてある事が分かる人もいれば
その本自体が見えない人もいます。

ある人には何万ページにもおよぶ分厚くてとても重たい本であったり
ある人には風で飛んでいきそうなペラペラの数ページのノートブックであったりします。

食い入るように何時間も読み続けている人もいれば
数行読んで，ポイッと投げ捨ててしまう人もいました。

金箔の表装で丁重に作られた贅沢な本だと感心する人もいれば
こんなボロボロでカビの生えた表紙の本は汚いという人もいます。

その本を読んだ事で希望に満ちた人生を歩む人もいれば
その本を読んで絶望して死んでしまう人さえいました。


ある日，薄暗い路地で私も偶然「愛の本」を見つけました。
真っ白い表紙に「愛」とだけ題名が書かれていましたが
中を見ると全部白紙でした。


私はこの本を今夜　あなたに届けに行きます
あなたの元につく頃は　明け方になるでしょう
でも，この本を今夜　あなたに届けに行きます
そして明日から　あなたと共に書いていきたいと思います
ふたりがこの世を去るその時まで
あなたと私で　書いていきたいと思います。


written by Feb.2005