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印象に残った、ネットで見つけた話♪

2017年02月19日 00:22

「笑っとった方が可愛いなぁ」


高校時代、体調を崩して入院していました。学校での人間関係につまづいてしまい、拒食症になってしまったのです。
とにかく塞ぎこんでいた私はいつも能面のように無表情で、、同室の患者さんやお医者さん、看護師さん達がやさしく声をかけてくれても非常にそっけない態度をとってばかりであまり話そうとしませんでした。
出してもらった食事も残してしまうことが多く、点滴の他にはチョコレートをほんの少しかじるだけの日が続きました。
駄々っ子の様な態度の私は、今思えば色々な方に大変ご迷惑をかけていました。
高校の勉強をするでもなく、病人らしく読書クロスワードなんかをするわけでもなく、ただただあてがわれた窓際のベッドで、名前も知らない山々を眺めているだけの入院生活でした。
そんなある日、看護師さんが私のベッドのそばに来て
上野さん、おやつ食べよ」と声をかけてくださいました。
ふと見れば看護師さんの手には売店のチョコレートがありました。
「……いらないです。ちゃんと食べられるか分かれへんし」
「ええの? 上野さんが食べへんねやったらあたしが全部食べてまうでぇ」
また太ってまうわぁ、と言ってにっと笑う看護師さんを見ていると、つい私もくすっと笑ってしまいました。
「笑っとった方が可愛いなぁ」
看護婦さんはそういって私の頭を撫でてくれました。
私はその時、自分が随分長い間笑っていなかったことに気付きました。
同時に、辛いことや苦しいことがあってもそれを顔に出さないように、言葉に出さないようにと一生懸命心の奥底に自分の感情を閉じ込めて無表情を決め込んで我慢し続けていた自分自身がいたことに気付いたのです。
看護師さんの何気ない言葉で、押し殺してため込んだその感情の蓋が開いたような気がして私は子どものように声をあげて泣いてしまいました。
看護婦さんはもちろん驚いていましたが、すぐに涙をぬぐってくれて、また頭を撫でてくれました。
それから私と看護師さんはチョコレートを食べながら少しの間他愛もない話をしました。
その後も何日かに一度、看護師さんとチョコレートを食べ、色々な話をするうちに私は少しずつ食事を食べることができるようになっていきました。
一言も話したことがなかった同室の患者さんと話すことも増え、しばらくして私は無事退院しました。
あれから十年近く経った今も、嫌なことがあった時や辛い時はあの時の看護師さんの「笑っといた方が可愛いのになぁ」という言葉を思い出し、最近会った楽しいことや嬉しいことを思い出して笑うようにしています。
苦しい時に二人で分け合ったチョコレートの味と、笑顔が自分に力と勇気をくれると気づかせてくれた看護師さんの言葉は一生忘れられません。

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