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中日新聞より。
2017年02月12日 03:17
『お葬式と誕生日』
今年の4月6日夜のこと。瀬戸市の長友さん(55)の家に訃報が入った。ご主人の母親が亡くなったと。
その日は息子さんの高校の入学式だったが、お祝いの気分も一度に冷め、翌日の飛行機で夫婦二人の故郷である宮崎県へ飛んだ。
離れているので年に一度くらいしか会いに行けなかったが、毎年、息子さんに誕生プレゼントが送られてきた。
息子さんも新学期早々ではあったが、かわいがってくれたおばあちゃんの通夜、葬儀に参列するため、忌引きを取って同行した。
葬儀を終え、4月10日、宮崎空港から飛行機に乗り込んだ。席に着くなり、客室乗務員の女性が近づいて来て「誕生日おめでとうございます」と言われ、驚いた。
慌ただしくて、その日が息子さんの誕生日であることをすっかり忘れていたのだ。当の本人さえも。
少し前までは、高校入学と誕生日のお祝いを兼ね、家族で食事にでも出掛けようと話してはいたのだが…。なぜ、分かったのだろうと首をかしげる。会員カードの登録データを調べてのことか。
「お子さんに差し上げるもので申し訳ございませんが、記念にどうぞ」と、あめ玉と玩具、ポストカードをセットにしてプレゼントしてくれた。
「客室乗務員さんは、もちろん私たち家族に不幸があったことはご存じありません。マニュアルなのか、それとも、その方個人の心遣いなのかは分かりませんが、心底驚きました。疲れ切った体と暗く沈んだ気持ちが、笑顔の一言で癒やされたのです。胸のプレートで名前を確認。ソラシドエアのFさん、ありがとうございました」と久代さんは話す。
《中日新聞掲載 2016年9月18日》
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