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成程話:ゲイツとジョブズ
2016年06月30日 23:52
竹内一正氏の心に響く言葉
ビル・ゲイツはすごいプログラマーだったのか?
そうではない。
なるほどプログラムをすることは好きだった。
しかしある時、新しくゲイツと仕事を始めた若者が、すでに完成していたプログラムを見て、「誰だ?こんなひどいプログラムを書いた奴は」とバカにしてしまった。
もちろんそのプログラムを書いたのはゲイツだった。
ゲイツより優れたプログラマーはたくさんいたのだ。
ではジョブズは素晴らしいエンジニアだったのか?
そうではない。
アタリ社で一応テクニシャンとして仕事をしていたが、優秀とは言いがたいレベルだった。
アタリ社創業者ノーラン・ブッシュネルから「ブレイクアウト」というブロック崩しゲームの回路設計を請け負った時も、実際に設計したのはジョブズではなく、友人だった。
友人に頼んでやってもらい、あたかも自分で設計したようにブッシュネルに報告し、驚かせた。
むろん、その友人とは、エレクトロニクスの魔術師ウォズニアックだった。
ビル・ゲイツは天下一のプログラマーではなく、ジョブズも天才エンジニアではなかったのだ。
だが、たとえば指揮者のカラヤンも小澤征爾(おざわせいじ)も、バイオリンやフルートの名演奏家ではない。
それでも、オーケストラを率いて感動の演奏を生む。
優れた指揮者は、個々の楽器をうまく弾けなくても、問題はない。
ゲイツもジョブズも同じである。
ただし、二人は共に希代の名指揮者であることは間違いないところだが、ビジネス術では決定的な違いがある。
ビル・ゲイツは商売を第一に考える。
だから、性能なんて後回しだ。
「天ぷらうどん」がなくても品札(しなふだ)を掲げ、お客が「天ぷらうどんをくれ」と言ったら、平気で素うどんを出す。
天ぷらの材料がなく、揚げ方もわからないが、仕入れて準備するより、手元にある素うどんでも出しておけば、ともかく「うどん」であることは間違いない。
「腹が減ってりゃ、客も文句は言わないはず」というのがゲイツ流だ。
マイクロソフトが開発したMS・DOSも、ウィンドウズも、そうだった。
それに対して、ジョブズは性能を追求する。
この目標だと決めたら、徹夜続きでぶっ倒れかかっているメンバーの首根っこをつかんででも、前に進み、目標を達成させる。
どれだけ客を待たせても、「素うどん」ではなく「天ぷらうどん」をつくり上げて客に届ける。
たとえば、マッキントッシュが設計目標をクリアして製品として完成するまでに、ジョブズは当初考えたより2年間も余計につぎ込んでいる。
ゲイツでは考えられない非効率ビジネスだ。
ゲイツが現実主義者とするなら、ジョブズは完璧主義者だった。
『スティーブ・ジョブズ 神の策略』経済界
竹内氏はこう語る(本書より)。
「ジョブズはPARC(ゼロックス社のパロアルト研究所)でパソコンの未来を発見したが、PARCを訪れた人々はジョブズ以外に数多くいた。
リンゴが木から落ちるのを見た人はたくさんいたが、そこから万有引力の法則を発見したのはアイザック・ニュートンだけだった。
また、ヤカンの蓋(ふた)が蒸気で持ち上げられるのを見た人は数限りなくいたが、そこから蒸気機関車を発明したのはジェームズ・ワットだけだった。
チャンスの女神は、往々にして私たちの手の届くところに潜んでいるようだ。
そして、人が見逃してしまいがちなチャンスを発見する力は、24時間絶えず考え続ける『持続思考』にあることは間違いない。
頭脳が問題を解こうとフル回転をしていると、チャンスのほうが手を振ってくれる」
同じものを見て、ある人はそこに大きな成功の種を発見し、多くの人はそれを見過ごしてしまう。
寝ても覚めても考え続けているかどうかが、閃きの差となってあらわれる。
ある種の執念であり、勘違いにも似た思い込みだ。
とほうもない夢を実現する人には限りない魅力がある。
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