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『定家明月記私抄』番外編です。

2009年05月09日 23:15

『定家明月記私抄』番外編です。

過日、『ホモルーデンス』に触れたことがある。それに関連して・・・。それからの連想と余計な勘ぐりと、老婆心から、後白河上皇法皇)について書かれているところに遡る。



後白河法皇死」(建久三年記)の章から、

伎芸のことが出て来たからには、後白河流行歌狂いのことも言及しておく必要があろう。御承知のように、後白河は、『梁塵秘抄』を編輯させた人であり、『梁塵秘抄口伝集』には、「そのかみ十余歳の時より今に至るまで、今様を好みて怠る事無」く、「四季につけて折を嫌はず、昼は終日(ひねもす)謡ひ暮らし、夜は終夜(よもすがら)謡ひ明か」して「六十の春秋」を経た、と述べている。



なおこの法皇に関してもう一つのことを付け加えておこう。後白河は日本の代表的春画の絵巻物『小柴垣草子』というものの、説明文章の筆者と伝えられている。これは、ある皇女と警護の武士との性交物語であり、その二人の男女、また乳母も加わっての、ありとあらゆる性交のかたちが画面に描き出され、後白河はこれに注釈を加えているのである。やりもやったり、とでも言うべきか。



問題の、絵巻物『小柴垣草子』を、橋本治の『ひらがな日本美術史2』が取り上げている。「その三十・・・・・・科学するもの『小柴垣草子絵巻』」である。



《小柴垣草子絵巻》には、《灌頂の巻》という別タイトルもある。”灌頂”というのは、頭のてっぺんに水を注ぐことである。仏道に入るための儀式として、密教の方にはある。(中略)《灌頂の巻》という別タイトルが与えられている《小柴垣草子絵巻》の内容は、だから、”性の洗礼”というようなものなのである。/洗礼を受けてそこに入って行くのは、当然”性の未経験者”である。女なんら当然処女で、その処女は、わざわざ「灌頂」という特殊に宗教的な言葉を与えられるような位置にいた人だということである。/平安時代には、賀茂神社伊勢神宮という二つの大きな神社の神に仕える、”斎院””斎宮”と呼ばれる特別な未婚女性がいた。”特別”というのは、この女性たちが内親王をはじめとする皇族の娘たちだったからだ。



このように、興味本位にこれ(『ひらがな日本美術史2』)を取り上げたが、相変わらず良い仕事をしている、橋本治が『芸術新潮』に連載したもので、全7巻ある。機会があれば、是非手にとって見ていただきたい本である。

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